次世代に健康をつなぐ「プレコンセプションケア」の重要性

次世代に健康をつなぐ「プレコンセプションケア」の重要性

出産の高年齢化で

約70年前の日本の女性は、30歳で3人の子どもを持つことが一般的でした。しかし現在では、30代から初めての子どもを出産する人が増えています。また、月経(生理)の開始年齢も当時より早くなっており、妊娠に至るまでに約20年間、毎月生理が来つづけます。その結果、PMS(月経前症候群)に悩まされる人や、子宮内膜症を患う人が増加しています。
また、卵巣は年齢とともに働きが低下し、30代後半から妊娠しにくくなります。しかし現在の性教育では、避妊については学ぶものの、「子どもを望む」という視点からの計画的な健康管理の重要性に触れる機会は多くありません。こうした背景を受け、近年では「プレコンセプションケア」の重要性が広く認識されています。

次世代に健康をつなぐために

プレコンセプションケアとは、将来の妊娠にむけた健康管理のことです。妊娠前、妊娠中の健康は、本人はもちろん赤ちゃんの健康にも影響を与えます。最近は専門外来での「妊娠にむけた体づくり」の指導のほか、感染症防止や生活習慣改善などの啓発活動も行われています。こうした個人的な要因に加えて、環境要因や社会インフラを整える活動も展開されています。
プレコンセプションケアで行われる内容は、妊娠・出産に関わらず、誰もが一生を健康に生きるために必要なことです。加えて、次世代の命に健康をつなぐために大切なこととも位置づけられています。

DXを使って情報発信も

研究活動の一環として実施したアンケート調査では、「産婦人科に行くのが怖い」「ピルは太る」といった回答が見られ、SNS上の情報に多くの女性が影響を受けていることがわかります。こうした結果をもとに、NPOでは情報サイト「子宮内膜症情報ステーション」を立ち上げ、また国の健康促進事業の一環として、専門サイトを通じて正しい情報を発信しています。将来的にはDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用し、ウェアラブルデバイスなどを通じて、個々のニーズに応じた健康情報の提供が目指されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

千葉大学 医学部  教授 甲賀 かをり 先生

千葉大学医学部 教授甲賀 かをり 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

産婦人科学、生殖医学、内分泌学、疫学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校までの勉強は、教科書に書いてあること(=すでに先人たちが明らかにしてきたこと)を理解し、覚えることが中心です。一方、大学での勉強は、教科書にまだ書いていないこと(=まだ誰も知らないこと)を明らかにすることです。まずは高校の勉強でしっかりと知識を身につけ、そこで自分が好きな分野や得意なことを見つけましょう。大学ではその分野について深く追求し、新しい発見に挑んでください。きっとワクワクしますよ。未来の教科書を書き換えるのは、あなたです!

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

千葉大学に関心を持ったあなたは

千葉大学は、他大学にないユニークな学部を含む全11学部を擁する総合大学です。学際的文理融合の精神のもとに、教育研究の高度化、産官学の連携推進、国際交流の拡充を進めています。近隣には放送大学、国立歴史民族博物館などがあり、各分野で共同研究が行われています。「つねに、より高きものをめざして」の理念のもと、世界を先導する創造的な教育・研究活動を通しての社会貢献を使命とし、生命のいっそうの輝きをめざす未来志向型大学として、たゆみない挑戦を続けます。