「劇場美術」の奥深い世界をのぞいてみよう
劇場美術とは何か
「劇場美術」とは、演劇、ステージ、コンサート、テレビドラマ、映画などで必要とされる空間デザインを指します。舞台空間をデザインする舞台美術家、テレビドラマの空間をデザインするプロダクションデザイナー、映画美術全般を担当する美術監督のほか、衣装を担当するコスチュームデザイナー、照明をデザインする照明デザイナー、音楽や効果音を担当する音響デザイナーなどは皆、劇場美術に不可欠な美術家やデザイナーです。
彼らは、自分の担当分野だけを究めればよいわけではなく、劇場美術を構成するすべての分野に精通して相乗効果が最大限になるようにデザインをする必要があります。さらに現在は、舞台装置や照明のコンピュータ化や映像革新が進んでいますから、そうした最先端の知識や技術の習得も不可欠の課題になっています。
テレビドラマのリアリティを創出
劇場美術の中のひとつの分野が、テレビドラマなどの美術を担当するプロダクションデザインです。
テレビドラマでは、カメラを通したリアリティが求められるので、例えば150坪のスタジオに無限大の風景を作り出すために、縮尺を替えたりデフォルメしてデザインするなどの技が必要です。登場人物の心理を浮き上がらせるために、空間に心理状態を象徴するような自然現象を取り入れることもあります。これもプロダクションデザインの役割です。これらは単にドラマの背景をデザインしているのではなく、ドラマの「情景」そのものをデザインしているので、「情景デザイン」とも呼ばれています。
ロングランを可能にする高い芸術性
舞台でもテレビドラマや映画でも、演出力と劇場美術のすべての分野の美術家とデザイナーの力が最大限に発揮されたとき、高い芸術性を有し、観客の支持を集める作品が生まれます。そういう作品は長く人々に愛され、ロングラン(長期興行)が可能になります。それは収益につながり、次の作品につながっていくことになるのです。
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先生情報 / 大学情報
多摩美術大学 美術学部 演劇舞踊デザイン学科 教授 山下 恒彦 先生
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