繊維製品の機能を確かめる新たな評価基準づくり
この製品は本当に「従来品より涼しい」のか
近年では、アンダーシャツや寝具などで、「清涼」といった機能性をうたった繊維製品が多く販売されています。しかし、実際にどの程度の効果があるかは具体的に知られていません。そこで人間を対象とした心理的・生理的計測と、機器を使って衣服そのものを対象とした物理的計測を行い、その機能性をエビデンス(科学的根拠)に基づいて証明しようという研究が進められています。
多面的な計測で、科学的に根拠ある総合判断を
この研究では、人が衣服を着用したときに感じる暑い、寒いのような「心理的部分」は官能評価という手法によって数値化されます。また、体温や心拍数の変化など無意識に体が反応する「生理的部分」は温度センサや心拍計によって測定されます。これによって心理的にも生理的にも効果があるのか、または心理的効果はないが生理的効果はあるなどを証明することができます。一方、機器を使った物理的計測は、今後大きく発展する分野とされています。例えば、人間の体温を再現できる特殊なマネキンに服を着用させて保温性を測定する、あるいは生地の接触冷感を評価するといった実験は、すでに着手されています。これらの計測結果を総合的に判断して、効果の有無を確かめようとしているのです。
新しい「ものさし」を提案して社会に広める
生地の強度のような基礎的な物性試験だけでは、日々進化する繊維製品や人間が感じる着心地まで含めた機能性を適切に評価することはできません。この課題解決には、試験方法のアップデート、すなわち新たな「ものさし」を作る必要があります。まさにそれがこの研究の目的だと言えます。この「ものさし」が完成して社会に浸透すれば、企業が服などを販売するときも「○%体感温度が下がる」など、根拠を持ってアピールができるようになり、私たち消費者にメリットが生まれます。また、ものづくりをする側も消費者の声に基づいて商品を改良でき、要望にきちんと応えられているかどうかを評価できるようになるはずです。
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