液体水素/酸素の取扱に注意! H-IIAロケットでの工夫と検証
ロケットの課題
H-IIAロケットは、これまでに46号機までを打ち上げた国内の主力ロケットです。大型のロケットを安定的に宇宙に送るために、機体設計では細部にわたってさまざまな工夫がなされてきました。例えば、ロケットの機体を宇宙まで飛ばすために使用される液体水素、液体酸素の液表面の静定です。
模擬環境での研究
宇宙空間での慣性飛行中は無重力のため、液表面が変化します。液面が乱れると、致命傷であるエンジンへの気体の混入を招きかねません。その為、H-IIAロケットでは、宇宙空間での慣性飛行中、再び燃焼する前にわずかな加速度を与え、液体水素/酸素がタンクの底部に保持できる様にしています。
このような設計を検証するために、実際のロケットを打ち上げることは現実的ではないので、打ち上げ環境を模擬する技術を用いて研究を進めます。設計時には、まず小さなモデルタンクを製作し、それを使用して落下試験を行います。実物のタンクとはサイズが異なっても、相似比が同じであれば発生する現象も同じです。飛行機の風洞実験などで模型を使用するのと、同じ考え方になります。この結果をもとにコンピュータによる数値解析(CFD)を行い、双方の結果を合わせこみ、ロケットの設計結果として反映させます。
航空機への技術転用
液体水素の活用は、ロケットだけではありません。水素は燃やしてもCO₂を排出しないため、カーボンニュートラル社会への移行に効果的で、車や船舶などへの適用が模索されています。すでにヨーロッパでは、液体水素燃料を使ったバスが運行されており、自動で液体水素を充填(じゅうてん)するスタンドも整備されています。さらに、液体水素を航空機の燃料にする検討も始まっています。H-IIAロケットの開発で得られた技術を航空機にも応用することで、新たな進化が期待されています。
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