これまでの憲法に「限界」が来ているってどういうこと?
なぜ憲法が必要なのか
日本は民主主義であるため、大多数が「正しい」と思うことを正しいとする仕組みの社会です。逆に大多数が「これは良くない!」ということは禁止されるので、社会にとって適切であるとも思われます。しかし中には自分から声を上げられない人や、周囲から理解されない人もいます。その人たちの色々な事情を踏まえた利益が、「大多数の意見」で決める民主主義だけだと反映されません。例えば妊娠中絶なら、一般論では「おなかの赤ちゃんの命が大事」であっても、一方で女性の様々な事情に寄り添い、その人らしく生きる選択ができるという「人権」を保障する仕組みが必要です。それが憲法です。
一つの価値観にすぎない「人権」
ただし、人権といえば、あらゆる時代や場所において認められる価値だと思うかもしれませんが、実はその国の文化によるところも大きく、時代が変わると人権の内容も変化します。日本人から見ると「男尊女卑だ」と思うことでも、外国の文化や宗教では常識ということがあり、逆に日本の伝統文化の中でも外国人から「なぜ?」と思われることもあります。グローバル化が進み、多様な文化が混じり合う中で特定の人権の価値観だけを尊重することは難しく、また「人権」を徹底すると「文化」のほとんどがなくなってしまう可能性もあります。
憲法は「絶対」ではない
また従来の憲法は「国民国家」を前提としていますが、グローバル化の中では、それが成り立たなくなってきました。さらにSDGs(持続可能な開発目標)では、温暖化などの「将来の可能性」によって今を生きる人たちの自由を制限することにもなり、「今」という時間軸でとらえてきた憲法は発想を転換する必要があります。このように時代の変化で様々な前提が崩れたため、従来型の憲法には限界が来ていると言えます。そこで、人権と文化それぞれをどこまで許容するのかを議論するなど、これからの憲法「学」では、従来型の憲法を「絶対」ととらえるのではなく、どう調整して変わっていくべきかを考えることが求められています。
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大阪経済大学 国際共創学部 国際共創学科 教授 小林 直三 先生
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