フランスとの比較 ルールづくりのルールを考える
生命倫理にかかわるルール
フランスでは1994年に「生命倫理法」がつくられました。以降、何度も改正を重ね、今では、生殖補助、ヒト胚を用いた研究、最新の科学技術を用いた医療など、倫理が問われる問題も含め、ルールを定めています。改正の際には、専門家に意見を求めるだけでなく、多様な価値観や倫理観をもつ国民の同意を得るために、一般の人々が広く意見を出し合い、議論をする機会も設けられました。
一方、日本には生命倫理法にあたる法律はありません。その理由として、生命医科学領域における技術進展の目まぐるしさ、倫理的な問題について社会の合意を得ることの難しさ、医師をはじめとする専門家の判断の尊重が挙げられます。
日仏の違い
「立法」は、主に国会が担います。しかし実際には、国会の中だけで法律をつくるのではなく、法律に沿って政策を実施することを担う内閣が、法律案を提出し、それが国会で認められる例が数多くあります。これについては日本もフランスも同じです。
他方、日本では、生命倫理にかかわる問題のように、国会がつくる法律ではなく、行政や専門家がつくるガイドライン、つまり法的拘束力をもたないルールを広く適用している領域もあります。
フランスでは、人の自由を制限するには法律が必要であるという意識が強く働いています。またその立法過程においても、市民会議のような場を開くなど、国会や行政が市民の声に対して大きな関心を払っています。
憲法学の役割
憲法と聞くと、基本的人権の尊重や平和主義がイメージされます。しかし、権利を保障し、平和を維持するには、国家権力をどう分配すべきか、権力同士の関係をどう保つべきかといった「手段」の適切さも大事です。立法のためのルールもまた、憲法で定めています。国民が制定する憲法で、こうしたルールを定めているということは、国民の考えによってはそれを変えることもできるということです。法学の中の「憲法学」という分野では、他国の憲法や法制度との比較も交えながら、こうした国の仕組みについて考えています。
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