障がい者を支えるさまざまな技術が社会発展にも寄与する!
触覚に頼るコミュニケーション
視覚と聴覚の両方に重度な重複(ちょうふく)障がいのある盲ろう者は、触覚を用いてコミュニケーションをします。盲ろう者のコミュニケーション手段には、指で点字を打つ指点字、指文字や触手話、手のひらに指先で文字を書く「手書き文字」などの方法があります。
また、従来は点字のほかに、凹凸のある線や点などで図形や地図を表現する触図がありましたが、最近では、多数のピンを上下させることによりリアルタイムで点字を表示する機器である点字ディスプレイが普及しています。さらに、点字ディスプレイのピンの数を多くして図形や地図を表示可能な触覚ディスプレイの研究も進んでいます。
触覚で自分の声を確認する
テクノロジーの発達にともない、障がい者の支援機器も進化してきました。点字ディスプレイを利用することで、盲ろう者もインターネットやメールなどの電子情報にアクセスすることが可能になりました。
盲ろう者の中には、「歌を歌いたい」と望む人がいます。しかし、自分の声を聞くことができないと、声の高低を把握することができないのでうまく歌うことができません。そこで、ピアノの鍵盤のようにピンを配置した触覚ディスプレイを用いて本人の声の高さを触覚フィードバックすることで、自らの声の高さを調整することにより歌うことができるようになりました。
「歌う」というのはどういうことか
このような研究の中で、意外な副産物も生まれました。「それでは、聞こえる人はどのように歌を歌っているのか」「そもそも歌を歌うというのは根本的にどういう仕組みなのか」という問題に行き当たり、通常の自分の声の高さを聞きながら確認しつつ歌うということを、「触って歌う」という別の角度からとらえ直すことにつながりました。
また触覚ディスプレイのような新しいデバイスは、ほかの分野の研究にも寄与することがあります。例えば触覚ディスプレイの研究は、将来的にはバーチャルリアリティの中で触覚を再現するときに利用される可能性を秘めています。
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筑波技術大学 保健科学部 情報システム学科 教授 坂尻 正次 先生
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