薬剤師が医療の現場で役立つためのツールを作れ!
薬は安全に正しく使ってこそ
ある種の白血病によく効く画期的な抗がん剤があります。きちんと飲めば9割の患者が、がん細胞のなくなる「寛解(かんかい)」という状態まで治るのですが、10回のうち2回以上飲み忘れると、治る率が約1割まで落ちてしまうという研究報告があります。どんなによい薬でも、飲み忘れや副作用で使い続けることができないと十分な治療効果は得られません。
薬の効き方には個人差があり、患者に合わせて薬を提案することも必要です。薬剤師が薬を安全に正しく使える環境を整えることで、治療効果を高めていくことができるのです。
薬物治療を監査する薬剤師
医師、看護師、薬剤師、理学療法士、検査技師など、医療にはさまざまな職種が携わっています。それぞれが専門性を発揮しながら連携することで、よりよい治療を行うのがチーム医療です。医師が病気を診断して治療計画を立てる、いわば治療の設計士だとすれば、その設計図通りに薬物治療が施行できるかを監査するのが薬剤師の役割です。
しかしほんの10~20年ほど前までは、薬剤師が患者に接する機会や、ほかの職種と連携する機会は今よりもずっと少なく、薬剤師が医療の現場で役立つには、新しい方法論やツールが必要でした。
どうすれば薬剤師が力を発揮できるのか
薬剤師を専従で一日中病棟に配置する試みは、北海道のある大学病院で始まり、今では全国へと広がりました。処方された薬が効いているか、量は正しいか、副作用はないかを薬剤師が判断するためのツールとして、処方箋に検査値を入れる取り組みも進んでいます。これにより、腎機能が落ちている患者であれば、副作用を警戒して薬の量を減らすなどの提案がしやすくなりました。また、薬局で患者から聞き取った情報を病院へとフィードバックする「トレーシングレポート」は、医師と薬剤師が連携するためのツールです。
このように、薬剤師が持っている知識を現場の判断へと変えて、一人一人の患者に合わせた薬物治療を行うために役立てられているのです。
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先生情報 / 大学情報
和歌山県立医科大学 薬学部 薬学科 臨床・社会薬学部門 教授 松原 和夫 先生
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