観光が地域に与える「経済波及効果」を算出する! 地域を守る経済学

地域の産業構造
特に地域社会にとって、多くの人が集まる観光イベントが生む経済効果はとても大きなものがあります。例えば「祭り」なら、そこに人々が訪れるための交通費や、滞在中に払うお土産や飲食代、温泉などの利用料、ホテルや旅館への宿泊費など、多くのお金が動きます。その具体的な金額は、金融機関や官公庁などが作成して発表している統計データなどを通して把握できます。これを地域ごとに設定されている「産業連関表」という表に基づいて計算することで、その祭りがもたらした経済波及効果を割り出すことができます。
経済波及効果の広がり
交通費や飲食費、宿泊費といった直接的にもたらされる経済波及効果を「直接効果」といいますが、例えば多くの人が飲食店を利用すれば、飲食店だけでなく、そこで使われる肉や野菜などを提供する生産者の売上も上がります。このように「直接効果に伴う原材料の投入によって増える効果」を「第1次間接効果」といいます。さらに、直接効果と第1次間接効果によって事業者が潤えば、そこに新たな雇用が生まれます。雇用された人が消費を行うことでもたらされる効果を「第2次間接効果」といい、これら3つの効果の合計を「経済波及の総合効果」といいます。
地域経済の活性化に
経済は常に循環しています。例えば誰かが何かを購入すると、そのお金が別の誰かの所得につながります。施設やイベントによって地域に集客ができれば、そこで多くのお金が使われて、お店や企業、原材料事業者が潤い、行政が徴収できる税金も増加します。反対に、コロナ禍のように人の流れや消費が停滞すれば、地域の産業構造に従って経済損失も広がっていきます。
経済学では、さまざまな統計データと理論モデルを基につくられた産業連関表を駆使しながら、地域にもたらされる経済波及効果を正確に算出します。その知見は、地域経済を守り、活性化する政策をつくる上でも、客観的な根拠に基づいたヒントを与えることができるのです。
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岩手県立大学 総合政策学部 総合政策学科 経済・経営コース 教授 ティー・キャンヘーン 先生
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