「俯瞰」の視点から見えてくる、地域の問題点とその解決法

お金や人が地域から出ていく
地方経済は、その地域内で生み出された富と、補助金のように中央(政府)からもらうお金で成り立っています。これら「可処分所得」は消費や投資という形で使われますが、地域外のモノや企業、人ばかりに消費・投資されてしまうと、お金や人という大事な「資本」がどんどん域外に流出してしまいます。2000年代以降の日本では、とりわけ地方経済において顕著な落ち込みが見られましたが、その要因は、地方で資本がうまく回らず、域内に還元されないという構造にもあるのです。
「エコシステム」を生み出せるか
近年、太陽光発電が盛んになり、地方でも多くの設備が稼働しています。しかし、そこから利益を得る事業者は大手電力会社や大都市圏の企業に集中しています。地方に落ちるのはわずかな借地料やメンテナンス費ばかりで、地域の中にきちんとお金が落ちる制度があるヨーロッパとは大きな違いがあります。
一方、山形県鶴岡市は地域と大学が連携して「鶴岡サイエンスパーク」を開設し、そこから注目のベンチャー企業が多数生まれています。理想的な研究環境・設備を整えたことで多くの研究者が集まり、その成果が新たな技術者を集め、育てるという「エコシステム」が形成されているのです。
地域経済を「俯瞰」で考える
地域経済は企業や商店、労働者や消費者、研究機関や行政などさまざまな「ステークホルダー」が関わり、それぞれが複合的に絡み合うことで成り立っています。こうした構造を「システム」としてとらえ、問題解決のアプローチを探求していく学問を「経済システム分析」といいます。例えばお金、情報、人の流れ、取引、雇用などの関係性などを調査・データ化し、それらを「俯瞰(ふかん)的」に分析してどこに偏りや欠陥があり、どんな解決策があるのかを考える点がこの学問の特徴です。個別の事象にとらわれずに全体を俯瞰する視点こそ、これからの地域を考えて、より良くする上で不可欠なのです。
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先生情報 / 大学情報

釧路公立大学経済学部 教授川島 啓 先生
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地域経済分析、政策評価論先生が目指すSDGs
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