AIが解き明かす「魅力」の正体

感覚的な「魅力」を科学する
これまで人の感性や経験に頼ってきた「魅力」を科学的に解明し、応用する研究が進んでいます。例えば、なぜスティーブ・ジョブズのプレゼンは人々の心をつかむのか、どんな広告が記憶に残りやすいのかといった問題に、AIを使ってアプローチするのです。
広告効果の指標の一つである「認知率 (どれだけの人がその広告を知っているか)」については、過去のデータをAIに学習させて新しいCMの記憶度を予測させたところ、実際の視聴者反応との一致率が80%を超えました。このほかにも、住宅の間取り選びなどで着実な成果を上げています。
AIの意外な判断のポイント
よく、「プレゼンの極意」「効くCMの作り方」などが話題になりますが、これは人間が考えて見つけ出したものです。AIはこうした知識を教えられなくても、与えられた情報を分析して、判断に使える「特徴量」を自ら見つけ出します。
さらにAIは、私たちが気づかないような判断材料も活用していることがわかっています。例えば犬と猫を見分ける際、動物の特徴だけでなく、背景に芝生があるかどうかまで考慮していました。人間が言葉で説明できない直感的な判断も、AIは独自の方法で理解しているのです。それにより、「住み心地の良さ」や「映える画像」といった感覚的な評価も、AIにより数値化できることが明らかになっています。
誰もが匠になれる未来へ
この研究分野の究極的な目標は、AIを使って人間の能力を最大限に引き出すことです。性質や世代の異なる複数のAIを組み合わせることで、より高度な判断や提案が可能になることもわかってきています。これにより、プレゼンテーションやデザインなどの細部と全体のバランスの両立が重要なものについても、改善点を具体的に指摘するといった応用が可能になります。将来的には、これまで長年の経験や特別な才能が必要とされてきた専門的なスキルも、AIのサポートによって誰もが短期間で習得できて、個性やセンスを発揮できるようになることが期待されています。
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東京大学 工学部 電気情報工学科・電気電子工学科 教授 山崎 俊彦 先生
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