「食べることが怖い」という発達障害の子どもをどう支えるか
発達障害等の子どもの食の困難
おいしそうに見えるイチゴは表面に密集した種や細かな毛が気持ち悪く感じたり、揚げたての香ばしいトンカツも、サクサクとした衣が口腔内(こうくうない)に刺さるように感じて食べられない人もいます。初めて見る食べ物が苦手、カレーにいつもと違う具が入っていると食べられない、といった人もいます。これは「感覚過敏」や「新奇恐怖」といった発達障害の子どもに多く見られる傾向で、そうした子どもにとって家庭や学校での食事は大きな困難になっています。
食べることの不安や恐怖
「食べる」とは、食物=異物を体内に取り込むことでもあり、本来は不安や緊張をともなう行為です。多くの人は、苦手な食べ物があっても成長段階で認知力が向上し、それが安全かどうかを判断できるようになりますが、発達障害のある子どもにとっては食べ物や食環境等への不安や緊張、恐怖、ストレスが解消されず、極度の偏食に陥るケースも数多くみられます。
原因の多くは「感覚」の調整、咀嚼や嚥下などの困難にありますが、他の人に理解してもらえるように説明することは簡単ではありません。そのため周囲の理解を得られず「わがまま」と言われたり、「食べられない私が悪い」と自分を責めたり、その場をしのぐために丸のみして体調を崩すといった子どももいます。
子どもと伴走する姿勢
「食の困難」の研究は、従来は保護者や学校の教師といった、周囲で支える大人が行う支援策を見つけようと進められてきました。しかし、当事者である子どもと保護者や教師に同じアンケート調査を行ったところ、子どもが求めるものと、大人が考える支援の形に大きな食い違いがあることがわかりました。例えば「苦手な野菜を刻んで入れる」「少しずつ慣れさせる」といった大人側の発想は、ときに押し付けになり、感覚的な困難を抱える子どもが求める支援とは異なります。まずは当事者(子ども)の声に耳を傾け、不安や辛さを理解するように努めながら、当事者と一緒に考え、伴走する姿勢こそが、支援の大前提なのです。
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先生情報 / 大学情報
金沢大学 人間社会学域 学校教育学類 准教授 田部 絢子 先生
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