体のささやきを聞く? 「光」を使って生体の硬さを測る技術

音と光の相互作用を使用した観察方法
光は、目に見えない小さな細胞や組織を詳しく観察できる上に、非接触・非破壊で測定できるという大きなメリットがあります。そのため、学校の理科室にもある光学顕微鏡をはじめ、光を活用したさまざまな観察技術が発展してきました。
これらの技術では、ものの形や構造を詳しく見ることができます。しかし、通常、光を使った観察では、ものの「弾力」あるいは「硬さ」を測ることはできません。 例えば、見た目が似ていても、触れば違いが分かるように、体の細胞や組織も「どれくらい硬いのか」を調べることが重要な場合があります。特に、肝硬変のように組織が硬くなる病気では、組織の硬さを測ることが診断や研究に役立ちます。しかし、一般的には、ものを押したり引っ張ったりして硬さを測るため、細かい細胞や組織の硬さを測るのはとても難しいのです。
そこで、「ものに光を当てて、音と光の相互作用によって起こる現象を見ることで、その硬さを測る」という技術が研究されています。
体の内の音で起こる光のドップラー効果
私たちの体の中では、熱ゆらぎによって、目に見えない「体のささやき」ともいえる微弱な音波が発生しています。例えば、ブラウン運動も熱ゆらぎによる現象の一つです。
この音波の伝わる速さは物質の硬さによって変わるため、速さを調べれば硬さを知ることができます。ここで、光をものに当てると、音波と光が相互作用し、「光のドップラー効果」が生じます。これは、音の影響で光の色がわずかに変化する現象です。この変化を測定することで、音速をとらえ、細胞や組織の硬さを調べることができます。
限りなく小さな色変化を検出
この方法では、限りなく小さな光の色の変わり具合を捉えるため、極めて単色性の高い照明光や、素早く色変化を識別できる分光器の開発が欠かせませんでした。今後は、分光器の精度を上げることや、組織の硬さや病気の種類と色の変化にどのような関連性があるかを調べるなど、実用化に向けた研究も行われていきます。
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