光で冷やす!? ペロブスカイト半導体が開く、光活用の新時代
太陽光を効率良く電気に変える材料は?
光を当てたときの物質の振る舞いを調べるのが、光物性物理学です。太陽光を当てたときの、光のエネルギーを電気に変える効率の良し悪しとその理由を明らかにすることも、光物性研究の重要なテーマです。
近年、従来のシリコンベースの太陽電池を超える効率を持つ新材料として、「ハロゲン化金属ペロブスカイト」という半導体に期待が寄せられています。この半導体は結晶の欠陥や不純物が少なく、電子の励起状態が長時間続くため、とても効率よく太陽光を電気に変えることができます。加えて、欠陥や不純物が存在したとしても励起状態の持続時間にあまり影響しないという特徴も、効率の高さに寄与しています。
光を当てると冷える不思議
通常は、光を物質に照射すると物質の温度は上昇します。光が持つエネルギーが物質に受け渡されることで、物質の総エネルギー量が増大して温度が上がるためです。ところが、逆に光を使って物質の温度を下げることもできます。物質内の電子の励起エネルギーよりもわずかに低いエネルギーの光を物質に入射すると、エネルギーの不足分を熱エネルギーが補います。電子が元の状態に戻る際に光を発しますが、そのエネルギーは入射光のエネルギーに熱エネルギーを足したものです。したがって物質の熱エネルギーが奪われた結果、温度が下がるのです。この現象が起きやすい物質と起きにくい物質があり、ここでもハロゲン化金属ペロブスカイトは最も起きやすく、光学冷却に適した物質であると注目されています。
光学冷却の可能性
「半導体光学冷却」が実現すると、冷媒やコンプレッサーを使わない「無振動無冷媒」冷却装置が製作可能になり、振動を嫌う精密機器の冷却などに活用できます。ほかにも、宇宙で太陽光を浴び続ける物体の温度上昇を抑える手段となるなど、さまざまな可能性が考えられます。半導体光学冷却の研究は始まったばかりですが、物性物理学の研究対象としても興味深い現象であり、今後の進展が期待されています。
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