講義No.13834 教育 児童学

身近な大人の好奇心が、幼児期の自然体験を宝物に変える

身近な大人の好奇心が、幼児期の自然体験を宝物に変える

植物の栽培や虫の飼育を通した成長

保育園や幼稚園に通う子どもは、目をキラキラさせて植物を観察したり、昆虫を捕まえたりします。幼児教育の父といわれるドイツの教育者フレーベルは、子どもは植物の栽培を通して種子から芽が出て葉が茂り、花や果実をつけ、最後には枯れるが、新たな種子は次の生へと繋がっていくという命の営みを体験的に理解し、「自分もこのように成長していく」ことを知る、と提唱しています。また、虫はペットとして飼育される小動物とは違い、野生の生態系そのままに生きています。食べたり食べられたり、弱って動かなくなる姿を見ることもあります。それらを通して子どもは「生きている」ということを感じます。

自然の中で、生活を営む実感を得る

植物の栽培や虫の飼育は、暮らしの近くにある自然です。高度経済成長期になってから農業は一部の専門家に集約されていきましたが、それ以前には家の裏の畑で野菜や果物を育てる生活が今よりずっと身近なものでした。植物が受粉して野菜や果物が育つには虫の存在が欠かせません。野菜を育てて食べたり虫と触れ合ったりする体験は、生活を営んでいるという実感を得て、生活主体者としての感覚を養います。SDGs(持続的な開発目標)には地球環境に関する課題がいくつもありますが、幼児期の自然体験は環境問題をわがこととして捉えて取り組んでいけるかにも影響するはずです。

好奇心を発揮している大人の姿

子どもが自然体験を楽しいと感じられるかどうかは、身近な大人の存在にかかっています。教育するのではなく、「植物の栽培が上手な大人」や「虫取りが大好きな大人」が子どもの前で存分に好奇心を発揮している姿を見せることが重要です。しかし現代では住宅の気密性が高くなり、また高層化していて、土に触れたり虫を見たりする機会が少なくなりました。保育者が虫を苦手としていると、その感情は子どもにも伝わります。そのため保育士・幼稚園教諭の養成課程では、学生が自然に慣れて、前向きになって現場に出られるような取り組みも行われています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

熊本学園大学 社会福祉学部 子ども家庭福祉学科 講師 二子石 諒太 先生

熊本学園大学 社会福祉学部 子ども家庭福祉学科 講師 二子石 諒太 先生

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保育学、保育実践研究

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は幼稚園教諭として勤務したのちに、大学で「保育者養成」に携わっています。幼稚園や保育園の先生は教育者、保育者であるだけでなく、暮らしの「何でも屋さん」になれるのが魅力です。子どもの衣食住全般を見ながら、必要があれば大工もするし、飼育や栽培の技術も身につきます。生活にまつわるさまざまなことが外注できる便利な時代だからこそ、「おじいちゃん・おばあちゃんの知恵」のような生活力が大事になってきます。よく言われることですが、子どもと共に生活するこの仕事は自分も成長できると実感しています。

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熊本学園大学は、創立80年超の伝統、9万8千人超の卒業生を輩出し、4学部11学科、大学院5研究科を擁する文系総合大学です。商・経済・外国語・社会福祉の専門分野教育はもちろん、学修・就職支援や、特待生、奨学金、留学制度などで学生生活をサポートしています。皆さんの夢をカタチにするため、幅広い「教養」と高度な「専門」知識の修得を柱に、多様な人々と協力しながら地域や世界の課題に取り組むことができる人材を育成することに努めています。