身近な大人の好奇心が、幼児期の自然体験を宝物に変える
植物の栽培や虫の飼育を通した成長
保育園や幼稚園に通う子どもは、目をキラキラさせて植物を観察したり、昆虫を捕まえたりします。幼児教育の父といわれるドイツの教育者フレーベルは、子どもは植物の栽培を通して種子から芽が出て葉が茂り、花や果実をつけ、最後には枯れるが、新たな種子は次の生へと繋がっていくという命の営みを体験的に理解し、「自分もこのように成長していく」ことを知る、と提唱しています。また、虫はペットとして飼育される小動物とは違い、野生の生態系そのままに生きています。食べたり食べられたり、弱って動かなくなる姿を見ることもあります。それらを通して子どもは「生きている」ということを感じます。
自然の中で、生活を営む実感を得る
植物の栽培や虫の飼育は、暮らしの近くにある自然です。高度経済成長期になってから農業は一部の専門家に集約されていきましたが、それ以前には家の裏の畑で野菜や果物を育てる生活が今よりずっと身近なものでした。植物が受粉して野菜や果物が育つには虫の存在が欠かせません。野菜を育てて食べたり虫と触れ合ったりする体験は、生活を営んでいるという実感を得て、生活主体者としての感覚を養います。SDGs(持続的な開発目標)には地球環境に関する課題がいくつもありますが、幼児期の自然体験は環境問題をわがこととして捉えて取り組んでいけるかにも影響するはずです。
好奇心を発揮している大人の姿
子どもが自然体験を楽しいと感じられるかどうかは、身近な大人の存在にかかっています。教育するのではなく、「植物の栽培が上手な大人」や「虫取りが大好きな大人」が子どもの前で存分に好奇心を発揮している姿を見せることが重要です。しかし現代では住宅の気密性が高くなり、また高層化していて、土に触れたり虫を見たりする機会が少なくなりました。保育者が虫を苦手としていると、その感情は子どもにも伝わります。そのため保育士・幼稚園教諭の養成課程では、学生が自然に慣れて、前向きになって現場に出られるような取り組みも行われています。
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