「思想」から「科学」へ 会計学の変遷

「思想」から「科学」へ 会計学の変遷

会計という学問

普段の暮らしのなかで「会計」と言えば、“代金を支払うこと”ですが、経済という視点で見れば、“お金や物の流れを記録したり、計算したり、管理したりすること”を言います。そして、後者の会計にはさらに、「業務」としての側面と、「学問」としての側面があります。公認会計士や税理士として活躍する人もいれば、会計が世の中に与える影響を研究する人もいるのです。

会計学は、文系? 理系?

さて、学問を分類するとき、日本では一般的に「文系」と「理系」とに分ける傾向があり、そうなると、「会計学」は、「哲学」や「経済学」と同じ文系に属します。アダム・スミスやカール・マルクスといった名前を聞いたことがあるでしょう。彼ら経済学者は哲学者、思想家でもあり、世の中を独自の切り口で分析し、『私はこう思う』と主張しました。しかし第二次世界大戦後、学問には、主観の入り込む余地のない「データ」を基にした科学的なアプローチが必要である、という考えが広まり、理系と呼ばれる学問と同じように、経済を数学的な手法で研究するようになったのです。会計学にもその流れがやってきました。
会計学もそれまでは、『私はこう思う。ゆえに、このように会計するべきである』と主張するのが主流でした。これを「規範会計学」と言います。しかし今、統計や現象といったデータに基づいて客観的に、緻密に分析する「実証会計学」へと移行しつつあります。

実験したいけれど

ただし、難しい面もあります。自然科学の分野では「実験」ができますが、政治や経済、法律など社会科学の分野では、「観察」しかできないのです。そこで行われるのが、「準実験」です。例えば現在、消費税は8%ですが、3%の時代がありました。増税した過去の時点を観察して、未来に増税したときに社会に与える影響を予測することは、準実験のひとつです。
このように、リアルな日常で起こる現象を、客観的な物差しで測り、物事の解明に結び付ける動きが会計学の分野にも取り入れられつつあります。

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先生情報 / 大学情報

横浜市立大学 国際商学部 国際商学科 教授 高橋 隆幸 先生

横浜市立大学 国際商学部 国際商学科 教授 高橋 隆幸 先生

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会計学

メッセージ

自分は何がしたいのだろう、自分には何が向いているのだろうと、わからなくて進路を決めかねている人は多いですよね。でも、悩んでいるだけではもったいないですよ。文系だから、理系だからと自分を狭い枠に閉じ込めないで、少しでも興味があることから始めてみてはどうでしょうか。私が商学部を選び、会計のゼミに入ったことに深い理由はありませんでした。まさか、自分がその道の専門家として人を教える立場になろうとは思いもしませんでした。人生、何がきっかけになるかわからないものです。とにかく、行動してみてください。

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