5つの変数で琵琶湖を徹底的に分析する
琵琶湖の生態系が壊れている
日本で一番大きな湖である琵琶湖では、今、その生態系が危機にさらされています。原因として考えられるのが、水底と水面の間での酸素循環の悪化です。
夏場に繁殖期を迎えたプランクトンは、寿命がくると湖底に沈みます。その死骸が微生物によって分解されるとき、湖底の酸素が使われます。そのため、夏は湖底が貧酸素状態となります。しかし冬になれば、水面に近い部分の水が冷やされて対流が起こります。大気に触れて酸素をたっぷり含んだ水が、湖底に向かって流れていくのです。その結果、湖底の水に再び酸素が補給されます。この酸素循環サイクルが琵琶湖の生態系を守っていました。ところが近年は冬場の冷え込みが弱くなっているために、酸素を含んだ水が湖底に降りていかないのではないか、そんな仮説があります。
琵琶湖をサイコロ状に区切って計算する
仮説を検証するため、琵琶湖内部の水流のシミュレーションモデルを作り、さまざまな計算を行っています。まず琵琶湖の中をサイコロ状の空間に区分けしていきます。そのサイズを小さく設定すればするほど、つまり区分けするサイコロの数が多くなるほど、計算の精度が高まることがイメージできるでしょう。
計算のポイントは、サイコロとサイコロのつなぎ目の状態がどうなっているのかいかに正確に計算することです。
計算に使う変数はわずかに5つだけ
仮説に基づいて計算式を作るために使う変数はたったの5つ、すなわち水温、水圧と水流で、水流は縦・横・高さの三次元で考える必要があるため、合計5つとなるのです。
もちろん生態系の変化を調べるためには何年もの解析が必要ですが、わずか5つの変数で巨大な琵琶湖内部の水流を計算できるのです。最近では、計算に使うコンピュータの計算能力がアップしたこともあって、計算結果と実際の計測データがかなりの割合で一致するようになってきました。琵琶湖の生態系についての仮説が立証されつつあるのです。
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大阪大学 工学部 環境・エネルギー工学科 環境工学科目 名誉教授 近藤 明 先生
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