コンピュータで新しい形を~「Origami」研究最先端~

コンピュータで新しい形を~「Origami」研究最先端~

コンピュータと出会った折り紙

「折り紙」は、アートとして大人の愛好家も非常に多い、また世界的に広がる日本の伝統的な文化です。
その折り紙は学問という観点から見ても興味深い対象で、現在では世界中で研究されています。研究分野も数学、工学、物理学と多岐にわたり、JAXAの宇宙機「IKAROS」のソーラー電力セイル(帆の一部に薄膜太陽電池を貼り付けたもの)の折りたたみにも折り紙の技術が応用されていることはよく知られています。最近ではコンピュータを使って折り紙を設計・研究する「Computational Origami」が主流です。

折り紙設計ソフトとは

伝統的な折り紙には「1枚の紙を、切れ目を入れることなく、折るだけで造形する」という幾何学的に厳しい制約があります。折り紙の設計ソフトは、この制約を満たす形を式で表し、「こういうルールで作る」というアルゴリズム(方法)をコンピュータに落とし込むことで作られます。
こうして作られた「ORI-REVO」「ORI-REF」などの折り紙設計ソフトは、ユーザーが自由に線を引いたり紙を折ったりする感覚で、好きな折り紙の形を作れるもので、これを使うと、折り紙独特の制約をふまえ、実際に作ることが保証された中で造形できるのです。

新しい形を求めて

従来の折り紙は、手で折りながら試行錯誤して新しい形を考えだしていましたが、こうした設計ソフトを使うと驚くほど複雑な形や、曲面を組み合わせた新しい形などを容易に考えることができます。例えば、1枚の紙で球体は作れそうにありませんが、飴の包み紙を見ると、外側にひだを作れば球体ができることがわかります。ひだの大きさを求める式を考えてコンピュータに計算させれば、折り紙でも球のような形を作れます。このように、一見すると1枚の紙ではできそうにない形も作れるようになるのです。
こうした新しい形を求める工夫は折り紙研究の地平を広げるだけでなく、産業界からも熱い注目を集めています。

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先生情報 / 大学情報

筑波大学 システム情報系  教授 三谷 純 先生

筑波大学 システム情報系 教授 三谷 純 先生

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情報工学、機械工学

メッセージ

好きなことがあったら、それをとことんがんばってみてください。私は小さいころから紙で遊ぶのが好きでしたが、同時にコンピュータが身近にあり、小学生のころからプログラミングをするコンピュータ少年でもありました。あなたも興味のあることが二つあるなら、その両方について追究するといいと思います。得意なことが二つできれば、その二つのことをうまく組み合わせると、きっと誰もやったことのない世界が広がります。

筑波大学に関心を持ったあなたは

筑波大学は、我が国を代表する研究機関集積地の筑波研究学園都市の中核を占める総合大学です。東京教育大学の伝統を受け継ぎ、柔軟な教育システムと専門分野を備え、学際性を重視しています。「学群・学類」制による学部段階教育、全教員の大学院所属による研究の重視、学生宿舎や課外活動など充実した学生生活支援などが特色です。今や“Tsukuba”ブランドは, 研究成果とともに国際的にも高い評価があります。