遺伝子の働きを明らかにすることで病気の理解を深める
病気のかかりやすさも決定する遺伝子
親子で顔や目の色が似ているのは遺伝であり、このような事象の決定に関わっているのが遺伝子です。遺伝子は見た目の特徴だけでなく、アルコール耐性や病気のかかりやすさなど、体質についても決定します。近年では、ハリウッド女優が遺伝子検査で乳がんや卵巣がんになりやすいと診断され、乳房や卵巣を切除したというニュースが注目されました。では、そもそも遺伝子とはどんな働きをしているのでしょうか。遺伝子の本体となる物質がDNAです。DNAはRNA に転写され、そこからタンパク質が作られ機能します。
「転写」に影響を与えるタンパク質
DNAはヒストンに巻き付いてヌクレオソームを形成しています。複数のヌクレオソームが結合したものをクロマチン構造と呼びます。細胞が分裂する際、DNAは複製されますが、正確な転写がなされないと、がんなどの病気の発生へとつながってしまいます。転写の仕組みを解明する研究が進められ、近年、クロマチン構造に影響を与え、転写を促すタンパク質の存在が発見されました。その一つが「ヒストンアスチルトランスフェラーゼ」です。ヒストンアスチルトランスフェラーゼが結び付いてクロマチン構造が変わることで、転写が活性化していることがわかりました。DNA複製の開始に働いているORCというタンパク質と相互作用するヒストンアセチルトランスフェラーゼが解析されています。
分子レベルから病気を理解する
クロマチン構造が変わると、転写に影響が出て、細胞内の状況が変わって病気へと発展していく可能性があります。このため、クロマチン構造を変えるタンパク質を発見し解析することは、病気への理解を深める重要な要素と考えられます。生化学では、このように生命現象をDNAやタンパク質などの分子レベルから明らかにしていきます。「なぜ病気になるのか」「なぜこのような仕組みなのか」といった、解明されていないことはまだ多くあります。基礎研究により病気への理解が深まり、予防や治療へつながることが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 医学部 医学科 教授 飯塚 眞由 先生
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