データサイエンスが解き明かす、植物が「動く」メカニズム
植物も自ら動いている!
植物は土に根を下ろして生活していて、動物のように素早く移動することはありません。しかし、葉などの一部の器官を動かす植物は実は多くあります。例えば、大豆などのマメ科の植物やケナフなどのアオイ科の植物の葉は、位置や向きを変えるように、毎日繰り返し動いています。葉の位置や向きのコントロールは光合成効率を高めるために重要です。植物は自分の成長に有利な条件を作り出そうと、ゆっくりと、しかし確実に動いているのです。
植物が動くメカニズムを理解するために
マメ科やアオイ科などの植物では、「葉枕(ようちん)」という部分が人体の関節のような役割を果たすことで、葉の柔軟な動きを生み出しています。植物の細胞は、動物にはない「細胞壁」という固い素材に覆われています。そのため、通常は柔軟な動きは難しいのですが、葉枕細胞の細胞壁には、ほかの植物細胞にはみられない小さな切れ込みがたくさん入っています。この切れ込みが、葉枕細胞の自在な伸び縮みを可能にしていると考えられます。それでは、葉枕細胞はどうやって葉の動きを生み出しているのでしょうか。葉の動きは、細胞壁に加え、葉枕で働く遺伝子や、葉枕内部で発生する力といった、さまざまな要素が複雑に絡み合って成立します。植物が動くメカニズムを理解するには、遺伝子や細胞、力学、形状といった複数の観点からデータを集め、それらをつなぎ合わせて研究を進める必要があります。
データサイエンスの適用
昨今は生物の分野でも、データサイエンスの有用性が注目されています。植物の動きについても、例えば、1つの葉から遺伝子と細胞、力学、形状などの時空間データを取得して数値化することにより、データ解析を通じて、数理モデルとして理解できるようになるはずです。数理モデル化の利点は、より客観的に種ごとの多様性を捉えられるようになることです。「言葉」による表現では人によって解釈が異なるリスクがありますが、それに頼らない、新しい観点での植物の理解と発見が進むものと考えられます。
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先生情報 / 大学情報
熊本大学 理学部 理学科 准教授 中田 未友希 先生
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先生への質問
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