子どもの運動能力は環境が育む! 幼児期の遊び環境の研究
幼児期の体力・運動能力の発達
私たちの生活は建築空間の影響を受けており、保育施設の空間は、そこで長い時間を過ごす子どもたちの成長に重要な役割を果たします。その一つが体力や運動能力の発達への影響です。国内の子どもの体力は年々落ちており、文部科学省の調査では、例えば中学生の持久走記録は年々低下傾向にあります。幼児期は体力・運動能力の発達において重要な時期ですが、幼児期の子どもについては体系的な体力測定は行われていません。そこで、体力測定の項目やシートが開発され、3,000名以上を対象に体力測定と歩数調査が行われました。
たくさん動く子どもは体力が高い
体力測定の得点と施設内での1日当たりの歩数の関係を調べたところ、統計的に有意な相関はみられませんでしたが、平均歩数を大きく上回る子どもは体力得点が高い傾向があることがわかりました。体力の伸びについても調べられて、伸び率が高い園児は歩数も多い傾向があることが確認されています。
さらに、保育施設の空間と子どもたちの歩数の関係も調査されました。歩数が多い園舎の特徴として、「園庭が広く、そこで遊ぶ時間が長い」「屋内に遊びコーナーがたくさんある」などが明らかになりました。遊びコーナーに関しては、特に上下階を回遊できる立体的な遊び場が良く、廊下の一部を広くした小さなホールがあることの影響も見られます。
「動く」を引き出す空間デザイン
歩数だけではなく、運動の種類についても研究が行われています。身体活動量が測れる装置を使って動作の種類と活動量の関係が調査され、「走る」「飛ぶ」だけではなく、「滑る」「こぐ」「蹴る」なども活動量が高いことがわかりました。さらに、園舎の設備ごとにどの種類の動作が多いかも調べられ、ネット遊具や複合遊具、築山といった要素ごとの影響が明らかになっています。
これらの研究結果を用いて、保育施設の設計図から、そこでの動作の種類と量をシミュレートして、空間設計に生かす研究も進められています。
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先生情報 / 大学情報
福井大学 工学部 建築・都市環境工学科 准教授 西本 雅人 先生
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