固体を原子レベルで探究する“マテリアル・サイエンス”

固体を原子レベルで探究する“マテリアル・サイエンス”

「物」の「物性」と「構造」

私たちは、衣服や机やパソコンなど「物」に囲まれて生活しています。これらは、多くの場合、金属、半導体、セラミックス、高分子物質(ポリエチレンほか)などでできており、液体や気体と区別して“固体物質”と呼ばれています。
この固体物質について、原子レベルの探究をするのが、「材料科学=マテリアル・サイエンス」という学問です。
例えば、ある固体が「熱に強い」という性質(=物性)があるとき、その固体の原子の種類や、それがどのような配列をしているのか(=構造)を明らかにして、「だから、この固体は熱に強い」ことを証明するのです。原子のレベルで固体の種類と構造がわかれば、すぐれた性質をもつ固体を、人工的に再現することも可能です。

原子の種類は無尽蔵

原子は、鉄(Fe)、水素(H)、炭素(C)など、現在のところ100あまりが知られています。一つの原子しか持たない固体のほかに、複数の原子からできているもの(FeC=はがねなど)もあります。理論的には、100の100乗以上の数の固体がつくり出せることになります。もちろん、自然界にそれだけの種類の固体があるとは限りませんが、それにしても、人類が調べたことのある固体は、ほんのわずかな数にすぎないのです。材料科学の役割には、自然界にある固体の原子の組み合わせの原理や法則を見つけ出すことも含まれています。

固体の原子レベルの構造とは?

一方、原子の配列の仕方には、「結晶」「準結晶」「アモルファス」という3種類が知られています。結晶(=クリスタル)とは、原子(または複数の原子の1ユニット)が特定の秩序だった配列をしている固体のことです。これを「長距離秩序がある」と言います。それに対して、アモルファス(=ガラス構造)とは、短距離的には秩序があるが、長距離的には秩序だっていない固体です。そして、そのどちらにも属さない、準結晶という配列の仕方が、1984年に発見されました。固体物質の世界はまだまだ多くの謎に包まれているのです。

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東京大学 生産技術研究所 サステイナブル材料国際研究センター 教授 枝川 圭一 先生

東京大学 生産技術研究所 サステイナブル材料国際研究センター 教授 枝川 圭一 先生

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材料工学

メッセージ

私は、早くから理数系に進学しようと考えていました。数学や物理の勉強はいいのですが、古典などの文系に属する科目が苦手で、あまりやりたくなかったのです。でも、受験のためには、文系の勉強も一通りはやらなくてはいけません。今、振り返ってみると、そのことは良かったこと、必要なことだったと思います。大学に進学して、専門領域が決まると、そのほかの勉強をする機会はなかなか生まれないものだからです。高校時代には、進学しようとする領域だけではなく、幅広い勉強をいやがらずにしておくことをおすすめします。

先生への質問

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東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。