講義No.14498 看護学

プレコンセプションケアで、未来を見据えた健康な体づくり

プレコンセプションケアで、未来を見据えた健康な体づくり

プレコンセプションケアとは?

「プレコンセプションケア」とは、将来の妊娠を見据えて、女性やカップルが生活習慣や健康管理に取り組むことです。妊産婦の死亡率に関しては、日本は世界でもトップレベルの低さを誇ります。ただし、妊娠や出産には流産や先天異常などのさまざまなリスクが伴い、現代的な生活習慣や出産の高齢化によってそのリスクは増加傾向にあります。これらのリスクの回避は妊娠に気が付いてからでは遅いため、いつか妊娠することを考えて、早い時期からのプレコンセプションケアが重要です。

無自覚な冷え

プレコンセプションケアの基本は生活習慣の見直しです。毎日バランスの良い食事をとり、適度な運動により適正な体重を保つなど、自分の体調を正しく知ることが大切です。中でも体の「冷え」は見落とされがちです。冷えは、妊婦の体調不良や不妊の要因にもなるものです。冷えを感じて暖かい服を着るなどの対策ができていればよいのですが、自覚がないまま放置してしまうと体に悪影響を及ぼしかねません。そこで若年期の女性の冷えの状態を可視化するために、深部体温を測定して、冷えをどれくらい感じているかを聞き取る調査が行われました。すると、深部体温は低いのに、冷えを感じていない人が一定数いることがわかりました。さらに、こうした自覚のない人に運動の実施などのセルフケアを行ってもらい、1カ月単位で測定を続けたところ、少しずつ改善が見られたという結果も出ています。

未来の健康につながる

冷えの例のように、若い頃ほど自分の健康に無自覚になりがちです。特に日本人は他国に比べて健康意識が低く、若年層に発症が多い子宮頸(けい)がんのワクチン接種率も非常に低い状況にあります。将来の妊娠や出産を早い時期からライフプランに組み込むことは難しいかもしれません。しかし、生活習慣が固定化する前の若い頃が改善できるチャンスです。プレコンセプションケアに取り組むことは、若者たちの健康的な未来につながるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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金沢大学 医薬保健学域 保健学類 教授 鏡 真美 先生

金沢大学 医薬保健学域 保健学類 教授 鏡 真美 先生

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先生が目指すSDGs

メッセージ

最近はデジタル技術が進化して、実際に何も言葉を交わさなくても買い物ができるし、人ともつながれる時代になりました。しかし、もし看護の仕事をするのなら、ケアの対象はロボットではなく人間です。そのため、コミュニケーション力がとても大切です。医療現場では、コミュニケーションエラーが重大な事故につながりかねません。看護の知識や技術は大学に入ってから学べるものです。高校の間は多くの人と話して、さまざまな体験を通じてコミュニケーション力を磨いてください。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

金沢大学に関心を持ったあなたは

金沢大学は150年以上の歴史と伝統を誇る総合大学であり、日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。本学が位置する金沢市は、日常生活にも伝統文化が息づき、兼六園などの自然環境に恵まれ、学生が思索し学ぶに相応しい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ、伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた創造都市とも言えます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み、地域はもとより幅広く国内外から来た意欲あるみなさんが新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。