海事英語は、航海士の七つ道具
「海洋国家」日本を支える航海士
「母なる海」とはよく言ったもので、周りを海で囲まれ、資源にも乏しい我が国にとって、海は恵みをもたらす“母”なる存在に相違ありません。豊富な食材を産み出し、今の生活に不可欠な石油も海の上を運ばれてきます。日本は海に拠って立つ、まさしく海洋国家なのです。
航海士は、そんな海のエキスパートと言えるでしょう。漁業、海運業、あるいは海の安全を守る海上保安庁など、どれ一つとっても今の日本に欠かすことのできない大切な職業です。そして、その主役が航海士に他ならないのです。
航海士に必須の海事英語とは?
さて、このような重責を担う航海士になるためには相応の条件があります。なかでも英語力は必要不可欠。というのも、国際条約において、英語は船員の資格条件でもあり、また、日本の船であっても乗組員が外国人というケースが多いからです。ただし、海上という特殊な場所で使用されるだけあって、海事英語という独特な言葉を用いるのも陸上とは異なる点でしょう。
海上では無線で交信をしようとしても、受信が途切れがちになるために正確な情報を伝えることができません。だからといって船同士が衝突などして海難事故を起こしてよいわけがありません。お互いの船名や位置などを正しく相手に伝えなければならないのです。そこで海事英語では、アルファベットにしてもこんな表現方法を用います。
例えば、AはALPHA(アルファ)、BはBRAVO(ブラボー)、GはGOLF(ゴルフ)、WはWHISKY(ウィスキー)のように表現します。船名が『YAMATO(大和)』の場合ですと、「“YANKEE(ヤンキー)”、“ALPHA(アルファ)”、“MIKE(マイク)”、“ALPHA(アルファ)”、“TANGO(タンゴ)”、“OSCAR(オスカー)”」となるわけです。「A」や「B」など1文字だと聞き逃す危険性がありますが、こうすれば音が途切れがちな海上でも間違いなく伝えることができるのです。
これらの単語が選ばれた経緯は定かではありませんが、Wをウィスキーと表すなど、何とも船乗りらしくてユニークな表現であることは間違いありません。
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