水産資源を絶滅や枯渇もさせず将来も利用できるか? その方法を探る
資源を持続的に利用するためのデータサイエンス
魚などの水産資源は、漁獲量を増やしすぎると当然枯渇してしまいます。そこで枯渇や絶滅を防ぎつつ将来にわたって安定的に資源を利用するため、漁獲量の上限を設けることが多いです。このとき議論や決定の根拠となるのが水産資源に対する科学的な情報です。そこで、漁業・環境・生態系などの視点から、資源の増減の様子を捉えるための方法が必要となり、理論とデータを駆使しつつ、統計学などの手法を用いてモデリングが行われます。
オーダーメイドの資源動態モデルを作る
資源の様子を正確に把握するには、その資源専用のモデルが必要となります。対象によって、現在の状態や増減の要因が異なるだけでなく、利用できるデータの質や量も違うからです。例えば、クジラは自然要因による個体数変化が小さく定期的な調査も行われているので比較的モデリングが容易ですが、環境の影響を受けやすいサンマや主に漁業からの情報を用いるマグロなどの魚類では難易度が高くなります。そのサンマですが、漁獲量の増加など人為的な理由だけでは説明しきれないほどに、資源量を減らしていることが調査と研究でわかってきました。その原因は環境の変化だと考えられていますが、未だ結論には至っていません。資源と漁業がともに持続的であり、生態系や環境が変化しても対応できるような新しい資源管理方法が求められます。
資源管理方法をシミュレーションで事前にテスト
水産資源の管理方法を検討する際、本当に適切に管理できるかどうか事前のチェックが必要です。いきなり漁業の現場に適用して、予想と異なる結果となった場合、資源に悪影響を与えかねないからです。そこでコンピュータ上で仮想モデルを作成し資源管理のシミュレーションが行われます。その際、気候変動や生態系変化なども想定し、将来得られる情報がタイムリーに取り入れられるような資源管理のルールをあらかじめ決めておくことで、変化に強くかつリスクを最小限にできる管理方法を探ることができるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋生命科学部 海洋生物資源学科 教授 北門 利英 先生
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