講義No.00538 教育 児童学

現代っ子の忍耐力

現代っ子の忍耐力

「がまん」できなくなった子どもたち

現代の子どもたちは我慢ができなくなったとも言われます。生活が豊かになったこと、少子化の影響や習慣の変化で、子どもに対するしつけが変わったことも影響しているでしょう。では、子どもに我慢することを身につけさせるためには、どうしたらよいのでしょうか。

「自由保育」の目的

現代の子どもたちの多くは、保育所や幼稚園で初めて集団生活をして社会性を学んでいきます。そこでルールを守ることや、我慢すること、譲り合うことを学びます。1989年、保育所と幼稚園の保育・教育方針である「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」が大きく変わりました。ここで打ち出された「子どもの主体的・自発的活動を重んじる」という保育・教育方針(いわゆる「自由保育」)によって、子どもたちは遊びを通して自主的・自発的に行動する力を身につけること、ほかの子どもと関わり、もめごとがあったとしても、そこで保育者が環境を整え(援助し)、その問題を自分で解決していく力を身につけることが期待されました。

幼児期に必要な「ルール」と「我慢」

「自由保育」とは、決して子どもが「自分勝手」に振る舞ってもよいという保育ではありません。そして本来の「自由保育」の目的は、保育士・教師の適切な指導と関わりがあって初めて達成できるものです。ところが「自由保育」を、子どもを野放しにし、勝手気ままに活動させることとはき違えてしまい、必要な指導さえも差し控える保育所・幼稚園もあらわれました。このことが、少なからず子どもの我慢する力の育成に影響を与えたとも言われています。
ルールを守ることや我慢することなど、幼児期に身につけるべき社会的能力はたくさんあります。子どもたちが我慢する力(忍耐力)を身につけることができるように、子どもたちを見守り方向づけ指導し、子どもの成長を促すことが大人の役割です。そんな子どもの成長を見守るには大人の我慢が必要です。じっくり子どもを見守る「我慢」ができないのは、本当は大人の方かもしれません。

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京都橘大学 発達教育学部 児童教育学科 教授 口野 隆史 先生

京都橘大学 発達教育学部 児童教育学科 教授 口野 隆史 先生

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