食糧危機がやってくる?

食糧危機がやってくる?

食糧になるミドリムシ

アメーバのように活発に動くことができるミドリムシは、植物と動物の性質をあわせもつ、不思議な生物です。意外にも、このミドリムシが新たな食糧として注目されています。栄養素をバランスよく含んでいて、特にビタミンEを多く含んでいます。パラミロン(貯蔵多糖)を含み、疾病予防にも効果があるため、サプリメントや飢餓地域への援助物質として送ることが考えられます。また、家畜の飼料にすることも可能ですし、なんと宇宙食としても利用することができます。
また、ミドリムシは二酸化炭素を吸収し、炭素固定する性質を持っています。平均的な火力発電所が1年間で排出する二酸化炭素は約157万トン。東京ドーム1杯分のミドリムシがあれば、火力発電所20カ所分のCO₂を消去することができるという、環境にやさしい生き物なのです。

食べられる藻類

ミドリムシ以外にも、意外なものが食糧となる可能性があります。例えば、中国で昔から食べられている藻の一種、“髪菜(ハッツァイ)”。滋養強壮の効果があるとサプリメントが作られていますが、まさに髪の毛のような形状をし、藻としては珍しく、水の中ではなく乾燥した陸に生えています。また、身近なところでは“石くらげ”。雨上がりの運動場の水たまりなどにできるもので、昔、滋賀県ではすでに食用にされていました。このような食用藻類は日本やアジア人はよく食べてきたので、少しはなじみやすいと思います。思いがけないものが食糧となる例を紹介しましたが、食品の機能性ということにも注目してほしいと思います。食品の機能としては、たんぱく質、脂質、ビタミンなどの栄養素を取り入れること、さらには味や色、香りを楽しむことなどがあります。もちろん、体調を整え、老化を抑制するなど、疾病予防成分の機能も大切なことです。このような話をきけば、ものを食べるときにはいろいろなことが気になるかしれませんね。

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鳥取大学 農学部 生命環境農学科 農芸化学コース 教授 渡邉 文雄 先生

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メッセージ

鳥取砂丘や日本海など、豊かな自然に囲まれた鳥取大学農学部では、農産物の生産、流通、加工はもとより、食品の安全性や機能性など、食品にかかわるさまざまなことを学びます。最近になって食品廃棄物の再利用など、全国で資源の活用に関心が高まっていますが、鳥取大学農学部では、以前からカニの甲羅のキチン・キトサンを有効利用するなど、廃棄されるものから新しく有益なものを探し、活用してきた伝統があります。食品をとりまくいろいろな問題について、深く学んでみませんか?

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