人はなぜ人を信頼するのか

人はなぜ人を信頼するのか

「信頼」をプログラムする

「信頼」のメカニズムをコンピュータ上で実験することができます。一つの仮想社会を作り、その社会を構成する一人一人に、それぞれの傾向をインプットし、それらの人々を交流させます。この時、信頼して上手くいった人は、次の日も同じように信頼するのか、裏切られて失敗した人は、用心深くなるのか、周囲を見回して上手くやっている人のまねをするとどうなるかなど、経験からくる学習、模倣などの要素を入れておきます。その社会全体で時間が経過した時、信頼関係が築かれているのか、崩れているのかをシミュレーションすると、さまざまな社会の状況を知る手がかりを見つけ出すことが可能です。

日本人は信頼が苦手?

「あなたは大抵の人を信頼できると思いますか」という質問を日本人とアメリカ人にしたところ、「はい、信頼できる」と答えた人の割合は、アメリカ人のほうが断然多いという結果が得られました。では「信頼」はどんな状況で生まれるのでしょうか?
例えば、ある村では全員がリンゴを作っています。村の中に裏切りはなく、リンゴを村人同士で交換するのには何の心配もありません。町へ出ると、ほかの村の人たちが、みかんや肉などを売っています。そこで、みかんを手に入れるため、自分のリンゴと交換しようとします。みかんを食べることは、村でリンゴを食べることよりずっと楽しいことなのです。しかし、騙されて腐ったみかんを渡されるかもしれません。でも、腐っていることを恐れて何もしないと、みかんを手に入れることはできません。この物々交換が成立する時、そこに「信頼」が生まれているのです。
人を信頼できる人は、ビジネスにおいても大きなチャンスをつかむ可能性があります。グローバル化が進む現代、日本を出ると世界中にさまざまなチャンスがあり、その分、騙されるかもしれないと感じる場面も多いのが現実です。チャンスを生かすには、信頼することも大切です。

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東北大学 文学部  教授 佐藤 嘉倫 先生

東北大学 文学部 教授 佐藤 嘉倫 先生

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大学は今まで共通基盤がなかった人たちと出会い、自分の世界を広げることができる場です。感性を磨くというほどの大げさな努力をしなくても、ちょっとプラグを抜いてみましょう。「プラグを抜く」とは、当たり前のことを当たり前と思わないことです。社会学は社会の成り立ちを考える学問なので、別の社会を見たり、時間を巻き戻したりすると、目の前の当たり前の中にいろいろな謎が見えてきます。研究に答えはありません。誰もわからなかったことに気づいた時の感動や、謎が次々と出てきて面白さが続いていくこと、それが研究の楽しさです。

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建学以来の伝統である「研究第一」と「門戸開放」の理念を掲げ、世界最高水準の研究・教育を創造しています。また、研究の成果を社会が直面する諸問題の解決に役立て、指導的人材を育成することによって、平和で公正な人類社会の実現に貢献して行きます。社会から知の拠点として人類社会への貢献を委託されている東北大学の教職員、学生、同窓生が一丸となって、「Challenge」、「Creation」、「Innovation」を合言葉として、価値ある研究・教育を創造して、世界の人々の期待に応えていきたいと考えます。