日本発・世界最強磁石が地球を守る!
常に世界をリードしてきた日本の磁石開発
子どものおもちゃからハイテク機器まで、磁石は私たちの暮らしに欠かすことができません。磁石の歴史は紀元前からと古いですが、人工磁石の歴史は意外に浅く、1917年のKS鋼が最初です。この発明者が、東北帝国大学教授だった本多光太郎氏です。以来、日本は磁石の開発において常に世界をリードしてきました。そして、現在最も強い力を持つのが、1984年にやはり日本人の佐川眞人氏が発明したネオジム磁石です。これは、KS鋼の約60倍の強さで、直径3cm×高さ5cmの大きさで5t程度の重さのゾウをも持ち上げてしまいます。携帯電話やパソコンの小型化、またハイブリッドカーの開発も、このネオジム磁石の存在なくしてはありえなかったでしょう。今やあらゆるハイテク機器や電化製品が、小型化・省エネ化をめざしていますが、高性能な磁石を使った小さくて消費電力の少ないモーターは、その切り札として特に期待されています。
さらに高性能な磁石をめざして
ネオジム磁石をさらに強くする方法が国をあげて研究されています。磁石の性能は、「磁化」と「保磁力」によって決まります。開発以来、改良が続けられているネオジム磁石の磁化は、既に理論値の97%にまで達していますが、保磁力はまだ12%程度です。また、この磁石には高温になると性能が落ちるという欠点があります。そこで、組織をナノ(10億分の1m)レベルまで細かくする技術や、結晶の界面(接触している面)の欠陥を減らす(界面制御)技術などを用いて保磁力を高め、高温に強くする研究が進められています。
地球規模の省エネにつながる高性能磁石の開発
現在、日本国内の全電力消費量の約50%が、モーターによるものです。さらに高性能な磁石を開発してモーターの消費電力を1%減らせば、原子力発電プラント1基分に相当するエネルギーの削減が可能と言われています。「地球環境を守るカギは磁石にあり」と言っても過言ではありません。高性能磁石の開発には、地球の未来がかかっているのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。