命を守るための「オーダーメイドの防災教育」
防災教育の成果はなぜ上がらない?
日本で防災教育が本格的に始まったのは、1995年の阪神・淡路大震災以降のことです。しかし20年以上防災教育を行っても、あまり成果は上がっているとは言えません。家具の転倒防止策をとっていない人もいまだに大勢います。「なぜ防災対策をしないのか」という調査では、「やろうと思うが先延ばしになっている」「面倒だから」という理由が合わせて5割を超える結果が出ています。防災に関心がないわけではありませんが、行動に移せていないのです。
食料を配るべきか配らざるべきか
防災教育は「家具を固定しましょう」「避難訓練をしましょう」と、一般的なノウハウを伝えるだけでいいのでしょうか。災害に関しては正解がある問題、正解がない問題の両方が存在します。川からあふれた水がどう流れるかは科学的に正解が出せる問題であふれる場所と程度がわかれば予測が可能です。しかし震災を経験して、災害には正解がない問題がたくさんあるということがわかりました。例えば避難所に3千人の人々が避難しているのに食料は2千食しかなく、足りない分はいつ来るかわからない時、ある分だけ先に配るのが正解な場合もあれば、そうではない場合もあるのです。
気候風土や文化で防災の概念は変わる
人間は地球上のさまざまな地域で、それぞれの気候風土、文化の中で暮らしています。厳しい自然環境の中で暮らすネパールの人たちは「特に防災対策をしていない」と言いますが、首都カトマンズであっても日常的に停電や断水がおこるため、多くの家庭でバッテリーを常備していたり、屋上にタンクを設置して水を溜めたりしており、彼らの生活習慣は日本人から見れば立派な防災対策です。
地域や文化によって、防災の概念やレベルは大きく異なります。日本とは異なる地域の文化や慣習を知ることで、普段は意識をしない生活の中に埋め込まれた防災の知恵を発見することができるのです。
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関西大学 社会安全学部 安全マネジメント学科 准教授 城下 英行 先生
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