食べてもアレルギーを起こさない卵をつくるには
卵アレルギーでも食べられる卵
ゲノム編集技術を使って、アレルゲンを含まない鶏卵を作る研究が行われています。ゲノム編集とは、DNAの特定の位置を切断することで遺伝子に突然変異を起こさせる技術です。哺乳類や魚類の場合は卵割する前の受精卵にゲノム編集をしますが、鳥類では難しいので、発生初期に作られる始原生殖細胞(精子や卵子の元になる細胞)を培養し、ゲノム編集してアレルゲンを作る遺伝子の機能をなくしたあと、胚に戻します。孵化したヒナのうちゲノム編集されている個体を選んで何代か交配させると、アレルゲンを含まない卵を産むニワトリが出来ます。
持続可能な研究開発をめざす
これを持続可能な開発にするにはさらに工夫が必要です。例えば伝染病が流行すると、せっかく育種したニワトリが全滅してしまうこともあり得ます。そこで、自然免疫を強化した感染症に強いニワトリの開発も進められています。現在は、高病原性鳥インフルエンザなどの感染症が出た場合、感染していない鳥も含めて広範囲に殺処分が行われています。これは畜産資源の観点からも動物福祉の観点からも好ましくありません。感染症に強いニワトリは、これらの課題の解決策のひとつとして期待されています。
殺処分を減らして動物福祉に貢献
養鶏における動物福祉の問題はもうひとつあります。採卵養鶏では、卵を産まないオスは生まれてすぐに殺処分されます。ニワトリのオスとメスが生まれる割合はほぼ1:1なので、膨大な数のヒヨコが殺されていることになります。動物愛護の進んでいるEU諸国ではオスの殺処分が禁止になりましたが、日本ではオスを飼育するコストの問題などから禁止には至っていません。ニワトリの雌雄産み分けができれば理想的ですが、鳥類は哺乳類と性染色体の組み合わせが異なるので、哺乳類で確立されている雌雄産み分け法を鳥類に応用するのは容易ではありません。そこで現在は、卵の早い段階でオスとメスを判別する方法の研究が進められています。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
広島大学 生物生産学部 生物生産学科 教授 堀内 浩幸 先生
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動物生命科学、免疫生物学、動物細胞工学先生が目指すSDGs
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