マイワシが減った原因は乱獲か、海の環境が自然変動したからか
昔大衆魚、今高級魚のマイワシ
あなたのお父さんやお母さんの世代が子どもだった1980年代は、マイワシは大衆魚と言って、とてもたくさん獲れる安い魚でした。1988年にはマイワシだけで最高450万トン獲れていました。そのころ日本の全漁獲量はおよそ1200万トンでしたので、3割以上をマイワシが占めていたのです。このころの日本の漁獲量は世界一でした。しかし、今はマイワシの漁獲量は5万トンを切っています。
この理由には乱獲が原因だという説と、海の環境の自然変動が原因だという説があります。いったいどちらなのでしょうか。
マイワシが育たなかった4年間
1989年から1992年の間には、マイワシの卵がたくさん生まれたことが調査でわかっています。ところが、それらのほとんどが網にかかる大きさになるまでに、死んでしまいました。これは自然環境が何らかの気まぐれを起こしたからだと考えられています。この4年間のマイワシの数を年齢別に調べると、普通は若い個体の数が多くなるところ、若い年齢層のマイワシが少ないいびつな「人口ピラミッド」ができました。マイワシも「高齢化社会」になってしまっていたのです。もしも乱獲が原因なら、親から先に減っていくはずです。
自然を合わせるか、自然に合わせるか
それでは自然変動だけが原因かと言うと、それだけではありません。この4年間が過ぎた後、減った親の数に見合うだけの卵が育つようになりました。しかしマイワシはそのあともどんどん減っています。それは乱獲が原因です。漁獲量を10万トン程度に抑えておくように学者が提案したのに、政府が以前と同じだけの漁獲量を認めてしまい、漁業者も獲りすぎたりしてしまったのです。つまり、ここまでマイワシが減ったのは、自然変動と乱獲の両方が原因だという結論に至っています。
無理な漁獲量を望むのは、人間が自然に合わせるのではなく、自然を人間に合わせる文明が続いていたからです。今後の持続可能な社会のためには、自然環境だけでなく、人間の行動まで考えることが求められるのです。
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