植物は会話している? 植物の出す匂いに注目!

植物同士のコミュニケーションとは
植物は、物言わぬ静かな存在に見えます。ところが実際は、生き延びるために目に見えない「匂い」を使って、周囲の環境と活発にコミュニケーションを取っています。
例えば植物の葉は、虫にかじられるとSOSの匂いを発します。その匂いは、葉をかじった虫に対するハチやテントウムシなどの天敵を呼び寄せます。また、同じ植物内のほかの葉にもキャッチされて、虫が嫌がる苦み成分を出すなどの防御態勢を取らせます。
こうした同じ植物内での葉と葉や、天敵の虫との「会話」を立ち聞きしている者たちがいます。それは周辺の植物です。周辺の植物たちは虫にかじられた植物が出す匂いを感じ取り、自分たちも防御態勢を取るのです。虫にかじられた植物の防御反応が周囲の植物に連鎖する様子が、蛍光タンパク質を使って世界で初めて可視化されました。この技術を畑全体に適用すれば、農薬のコントロールなどスマート農業に応用できると期待されます。
合成生物学で植物を工場に改造
植物が作り出す匂い成分は香水などに利用されていますが、希少な植物由来のものは抽出量に限りがあるため工場で製造されています。そこで、このような希少な匂い成分を、合成生物学の手法を用いて植物の中で大量に作らせようという研究が進められています。合成生物学とは遺伝子改変技術で新しい生物や生体機能を作り出す学問領域です。合成生物学を使えば、動物由来の匂い成分も植物に作らせるようデザインすることが可能です。仮にデザインがうまくいかなかった場合も、その理由を追究することは、生命現象の深い理解に役立ちます。
環境にやさしい「植物工場」
育てやすい植物を使った「植物工場」で匂い成分を作り出せれば、エネルギー消費やCO₂排出を減らせるとともに、希少な動植物の保護にもつながります。また、休耕地を再利用してもともとそこで栽培されていた植物を使って工場にすれば、その土地での農業のノウハウがそのまま使えるなどのメリットもあります。
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筑波大学生命環境学群 生物資源学類 助教木下 奈都子 先生
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