さまざまな侵入経路で日本にやってくる外来植物

さまざまな侵入経路で日本にやってくる外来植物

人が作った環境で生きる雑草

道ばたや空き地など、人間が環境を改変して作り上げた場所に生育している植物の約半数は、外国からやってきた外来植物です。外来植物の侵入経路には、意図的なものと非意図的なものがあります。例えばシロツメクサは、荷物の緩衝材として箱に詰められて意図的に持ちこまれたものが国内で広まったのです。一方で海外の農耕地で雑草化していた植物の種子が輸入穀物にまぎれこんで非意図的に侵入する外来植物もいます。

港は外来植物の入り口?

海外から荷物を輸入している港は、外来植物の主な入り口でもあります。日本には北から南まで全国に港があるため、どこからでも外来植物が入ってくる可能性があります。1980年代にこれまで国内ではほとんど見たことがなかった外来植物が畑で大発生し、問題になりました。輸入穀物に混入していた外来植物の種子が、各地の農耕地に入ってしまったことが原因だと考えられています。このような事態を防ぐためにも、外来植物の侵入経路や特性、分布状況などを把握することが必要です。

複数の経路で侵入する雑草

多くの外来植物は複数の侵入経路をへて日本に持ち込まれています。ドクムギ属のイネ科植物も、牧草や緑化資材として意図的に持ち込まれる経路と、輸入穀物に混入して非意図的に持ち込まれる経路が存在します。今ドクムギ属は、日本の農耕地から砂浜海岸まで、どこにでも見られる雑草となっています。しかし、形態や遺伝的な特徴を調べてみると、農耕地に雑草化している個体は、牧草や緑化植物として意図的に導入された栽培品種とよく似ており、一方で、砂浜に生育している個体は輸入穀物に混入し、非意図的に侵入している個体とよく似ていることがわかりました。つまり、日本国内の砂浜と農耕地には、異なる侵入経路に由来する特徴の異なるドクムギ属が分布拡大しているのです。
多様な侵入経路が存在することによって、さまざまな特徴を持った外来植物が侵入し、新しい雑草問題をひきおこす原因となることがあります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

京都大学 農学部 資源生物科学科 准教授 下野 嘉子 先生

京都大学 農学部 資源生物科学科 准教授 下野 嘉子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

植物生態学

先生が目指すSDGs

メッセージ

雑草は、人が作りだした環境の中で絶妙な進化を遂げて繁栄している植物です。例えば、草刈りをしたり、除草剤を散布したり、足で踏みつけたり、植物にとっては大きな負荷となるような行為にも適応し、繁栄しています。ぜひ身の回りの雑草を一度観察してみてください。
観察するときは植物が生えている環境に注目してください。アスファルトでかためた道路の隙間なのか、田んぼの近くの土の上なのかなど、その植物が生育している環境の違いを比較してみましょう。あなたなりに調べる中で、雑草研究の楽しさを知ってもらえるとうれしいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

京都大学に関心を持ったあなたは

京都大学は、創立以来築いてきた自由の学風を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献するため、自由と調和を基礎にして基本理念を定めています。研究面では、研究の自由と自主を基礎に、高い倫理性を備えた研究活動により、世界的に卓越した知の創造を行います。教育面では、多様かつ調和のとれた教育体系のもと、対話を根幹として自学自習を促し、教養が豊かで人間性が高く責任を重んじ、地球社会の調和ある共存に寄与する、優れた研究者と高度の専門能力をもつ人材を育成します。