講義No.01559 機械工学

ネイルチップが触覚センサーに

ネイルチップが触覚センサーに

マニキュアと爪

「マニキュアを塗ると指先の感覚に違和感がある」と一人の女子学生が言いました。マニキュアで指先の感覚が変わるのなら、その原理を応用すると、触覚を自由にコントロールすることが可能です。試しにマニキュアを薄いシートに塗ると、シートはカールするように下に回り込みました。違和感は、ものを内側に曲げるマニキュアの性質が原因だと考えられます。
爪は非常に重要です。ものをつかむとき、手の指先に入れた力は爪によって支えられています。足の指も同じで、爪がなければ踏ん張れず転倒する危険があります。爪の根元には触覚センサーが密集しているので非常に敏感です。爪には、敏感な指先を保護し、指先にものが触れたときの力を根元までしっかりと伝える役割があるのです。

爪で指先の感覚を支配する

では、爪に装着できる薄い調整装置があれば何ができるでしょう? その装置で爪の曲がり方や形を変えることができれば、指先の触覚を制御することが可能です。例えば、調整装置をつけ、精密な仕事をするときは、ダイアルを+2に合わせると、指先の感度が上がります。逆に指先がしびれて困るような場合には、-1に設定すると、感覚が鈍くなりしびれを緩和することができます。
医療現場にも応用が可能です。手の神経を縫い合わせる手術の直後は、感覚はとても鋭敏になるため、痛みを感じてものに触れることもできず、リハビリがまったくできなくなります。そういう場合、この装置を装着し、鈍くなる設定をすると、少し楽にものに触れることができるようになります。
また、高齢者は足の踏ん張り感が衰え、転倒することがあります。皮膚の弾力がなくなったり、触覚センサーが少なくなってきたりするのが原因の一つと考えられますが、爪うまく利用すると、衰えてきた踏ん張り感を少し回復させる可能性も生まれてきます。
実はこの調整装置、“触覚ネイルチップ”は、実用化に向けて確実なステップを刻み始めているのです。

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名古屋工業大学 工学部 電気・機械工学科 機械工学分野 教授 佐野 明人 先生

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メッセージ

人が安全に安心して使えるものをつくるときに最も重要なことは「人間を知る」ということです。ものづくりの世界で「人間を知る」ことは、単にテクノロジーの分野だけでなく、サイエンスの領域にも足を踏み入れることです。大学は「知」の拠点です。知的探求心に目覚め、原理原則に従って真理を追究すれば、世界の誰もやっていない独創的なアプローチが可能になります。機械工学や触覚の分野には、知られざる領域が多く、研究対象としてはまさに“宝の山”です。身近な現象に潜む基本原理の発見が大きな感動をもたらしてくれるのです。

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名古屋工業大学は、世界のものづくりの中心地である中京地区の工学リーダーとして、技術イノベーションと産業振興を牽引するにふさわしい高度で充実した教育研究体制を整備しています。さらに国内の工科系大学のみならず、世界の工科系大学と連携することにより、工科大学の世界拠点として、異分野との融合による新たな科学技術を創成し、有為の人材を数多く世に送り出そうとする構想をもっています。