知られざるロボットの世界

知られざるロボットの世界

電子制御には無縁!“受動歩行ロボット”

人間が歩くのと同じように、滑らかに動く膝(ひざ)関節を持ったロボットがあります。“ロボット”というと、アクチュエーター(モーター)、センサー、コンピュータを搭載し、複雑なプログラムによって制御された、ぎこちない動きのものを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、この滑らかな膝関節を持ったロボットにはアクチュエーターはまったく搭載されていません。プログラムの制御で足を動かすのではなく、受動歩行といって、スロープを下る際の重力をエネルギーとして、自然に足が曲がったり伸びたりしながら歩行するのです。「大きなエンジンがあり、プロペラを回せば飛行機は飛ぶ」と思い込みがちですが、エンジンもプロペラもなく上昇気流にのって飛ぶグライダー的な発想から生まれたものがこの「受動歩行ロボット」です。

基本原理に立ち返り、単純な創造を!

筋肉も頭脳も感覚もないこのロボット、実際の人間の脚とほぼ同じ大きさの骨格だけが動いているように見えるのですが、その動きは「二本の脚で歩ける」という歩行の基本原理に基づいています。したがって、つまずいたり、転んだりすることなく、安定した動きを持続することができるのです。また、単純な原理を最大限に活用することで、エネルギー効率もよく、ロバスト性(いろいろな条件が変化しても、正しく機能すること)に優れ、安全に扱うことができます。

人間を中心にロボットの未来像を考える

現在の形はまだ完成形ではありません。将来的には、人間とロボットが共存して、ヒューマノイドの形で私たちと一緒に生活をしていく上での移動手段としての歩行原理を発見する研究や、受動歩行機が人間と同じ動きをする性質を利用して、人間の歩行機能が衰えはじめた時、身体に装着して「歩行支援」するロボットとして活躍できるような研究が期待されています。

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名古屋工業大学 工学部 電気・機械工学科 機械工学分野 教授 佐野 明人 先生

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メッセージ

人が安全に安心して使えるものをつくるときに最も重要なことは「人間を知る」ということです。ものづくりの世界で「人間を知る」ことは、単にテクノロジーの分野だけでなく、サイエンスの領域にも足を踏み入れることです。大学は「知」の拠点です。知的探求心に目覚め、原理原則に従って真理を追究すれば、世界の誰もやっていない独創的なアプローチが可能になります。機械工学や触覚の分野には、知られざる領域が多く、研究対象としてはまさに“宝の山”です。身近な現象に潜む基本原理の発見が大きな感動をもたらしてくれるのです。

名古屋工業大学に関心を持ったあなたは

名古屋工業大学は、世界のものづくりの中心地である中京地区の工学リーダーとして、技術イノベーションと産業振興を牽引するにふさわしい高度で充実した教育研究体制を整備しています。さらに国内の工科系大学のみならず、世界の工科系大学と連携することにより、工科大学の世界拠点として、異分野との融合による新たな科学技術を創成し、有為の人材を数多く世に送り出そうとする構想をもっています。