知られざるロボットの世界
電子制御には無縁!“受動歩行ロボット”
人間が歩くのと同じように、滑らかに動く膝(ひざ)関節を持ったロボットがあります。“ロボット”というと、アクチュエーター(モーター)、センサー、コンピュータを搭載し、複雑なプログラムによって制御された、ぎこちない動きのものを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、この滑らかな膝関節を持ったロボットにはアクチュエーターはまったく搭載されていません。プログラムの制御で足を動かすのではなく、受動歩行といって、スロープを下る際の重力をエネルギーとして、自然に足が曲がったり伸びたりしながら歩行するのです。「大きなエンジンがあり、プロペラを回せば飛行機は飛ぶ」と思い込みがちですが、エンジンもプロペラもなく上昇気流にのって飛ぶグライダー的な発想から生まれたものがこの「受動歩行ロボット」です。
基本原理に立ち返り、単純な創造を!
筋肉も頭脳も感覚もないこのロボット、実際の人間の脚とほぼ同じ大きさの骨格だけが動いているように見えるのですが、その動きは「二本の脚で歩ける」という歩行の基本原理に基づいています。したがって、つまずいたり、転んだりすることなく、安定した動きを持続することができるのです。また、単純な原理を最大限に活用することで、エネルギー効率もよく、ロバスト性(いろいろな条件が変化しても、正しく機能すること)に優れ、安全に扱うことができます。
人間を中心にロボットの未来像を考える
現在の形はまだ完成形ではありません。将来的には、人間とロボットが共存して、ヒューマノイドの形で私たちと一緒に生活をしていく上での移動手段としての歩行原理を発見する研究や、受動歩行機が人間と同じ動きをする性質を利用して、人間の歩行機能が衰えはじめた時、身体に装着して「歩行支援」するロボットとして活躍できるような研究が期待されています。
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