子どもの発達と野外保育との最新事情
身体感覚の偏りに注目
お集まりが始まっても、歩きまわったり、寝転んだりしてしまう。ご飯を食べるときに姿勢がくずれる。保育園児や幼稚園児には、そういった気になる姿を見せる子どもがいます。近年の研究でこの原因が身体感覚の偏りにあることがわかってきました。この場合の身体感覚とは姿勢や動きをつくる体性感覚を指します。力をコントロールし、バランスをとる感覚のことで、動きに課題がある子どもはその感覚をうまく使いこなせていないのです。この感覚を自発的に使うよう促せば気になる姿が改善することがこれまでに判明しています。
自然の中の遊びで整える
身体感覚を自発的に使い、改善へ導く方法として、山の中など自然のなかでの活動を行います。坂道を上ったり下りたり、でこぼこ道を歩いたり、木の下をくぐるといった動きを遊びのなかに取り入れることで、自然に身体感覚を整えるのです。最終的に、野外でよく遊ぶ子どもたちとそうでない子どもたちのデータを比較し、分析した結果によって、野外保育や外遊びと発達との関係が解明できるでしょう。「外遊びは身体の発達によい影響をあたえる」とは昔からいわれていますが、実は客観的なデータは存在していません。この研究でそれらが明らかになることが期待されています。
待たれる療育プログラム
身体の動きが改善されれば、子どもは自分の気持ちをコントロールしやすくなります。このことは脳科学の分野でも解明されつつあります。また姿勢が整うと周囲がよく見え、外の情報がより多く得られるようになるため、積極性が高まることもわかっています。発達が気になる子どもは衝動性が高いケースが多く見られますが、その点も落ち着いてきます。
今後は得られた研究結果をもとにした療育プログラムの作成が期待されます。また幼児が巧技台(跳び箱など)の活動を行う際の、エビデンスに基づいた効果的な指導方法の確立や適切な教材の開発も見込まれることでしょう。
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先生情報 / 大学情報
長野県立大学 健康発達学部 こども学科 教授 前田 泰弘 先生
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