「タチコマ」の実現をめざす研究が意味するものとは

「タチコマ」の実現をめざす研究が意味するものとは

「タチコマ」のようなコンピュータを作る

漫画やアニメで人気の『攻殻機動隊』に、「タチコマ」という自ら思考する戦車が出てきます。この「タチコマ」のように、自分で考え学習し、知識をためて導出することができる、そういったコンピュータを作ることを目標にした研究が進んでいます。
とはいえ、今進んでいるのは神経細胞1個を「シリコンニューロン」という電子回路で再現する段階です。それを少しずつ組み合わせて数を増やしていけば、最終的には脳と同じ能力に到達でき、脳を超えられるのではないか、と考えられています。

電子回路は人間に置き換わらない

こういった研究が進むと「人間はなにもしなくなるのでは?」「自分の能力を上げるために使う人が出てくるのでは?」という疑問を持つ人がいるかもしれません。実際に、1970年代にアメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)で「人間の脳細胞を一つずつシリコンニューロンに置き換えていったら、人間の自我を保ったまま脳をコンピュータにできるのか」という議論を行った学者もいます。実際はやってみないとわかりません。
しかし、神経細胞と同じ電子回路を作るといっても、「同じ」の意味は難しく、完全に同じものは作れません。情報処理という観点から考えれば「同じ原理」で動くものを作ることの方が重要なのです。

シリコンニューロンを研究する意義とは

『サロゲート』、『A.I』など、人工知能を扱った映画や文学作品は数多くありますが、それらに通底する感傷と、この情報処理技術の研究・開発は別の問題です。
この研究の目標の一つに「知識のゆりかご」があります。世界にはいろいろな知識があります。しかしその大部分は、人間が死ぬたびに失われているのです。この研究が進めば、その知識が消えないように、知識を集積し、それ自体が新しい知識を生み出すようなシステムを作ることができるかもしれません。
このようなコンピュータが実現すれば、「知」が失われずに引き継がれていく世界が実現するかもしれません。

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東京大学 生産技術研究所 マイクロメカトロニクス国際研究センター 教授 河野 崇 先生

東京大学 生産技術研究所 マイクロメカトロニクス国際研究センター 教授 河野 崇 先生

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生体情報学

メッセージ

自分の興味のあることが見つかったら、それを一生懸命やってください。私は高校生の時に物理が好きで、大学生が使う教科書を読んでいました。「難しくてわからないだろう」、と思って読まなかったり、最初の数ページを読んであきらめてしまうのはもったいないことです。もちろん、わからないところはたくさんありますが、一部分でもわかるところが必ずあります。何度も読んでいるうちに、そこを中心に、少しずつその周辺がわかるようになってきます。わからないからとあきらめず、わからないなりに取り組んでみることがとても大事です。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。