地上の環境保全のために、地下空間を活用する

地上の環境保全のために、地下空間を活用する

トンネルは現代生活を支えている

トンネルは、山を貫通する鉄道、海の底の道路、都市の地下鉄など、大規模な交通網にとってなくてはならない構造物です。でも、それだけではなく、現代では上下水道、都市ガス、電線や電話線まで地下に埋め込まれるようになり、ライフラインをも支えています。さらに、大雨のときに河川が氾濫しないように、都市の地下に貯水施設が造られる例が増え、また交通渋滞の緩和のために道路を立体交差とする場合、地下化が採用されることも少なくありません。
これらはすべて高度なトンネル技術があって初めて可能となります。

地上を保全したまま、地下を掘る技術

現代のトンネル技術、特に都市空間の下を掘る場合、シールド工法という技術が大活躍しています。
シールド工法とは掘削しながらトンネル本体の構築を並行して行う方法です。これに対し「開削」と言って、地面に溝を掘り、あとからトンネルの天井部分にあたるところを閉じる方法もあります。後者は浅いトンネル向きであり、地上を掘り返しても良いようなときは、便利な方法です。
でも、現代の都市空間や海や河の下を掘るときには、シールド工法でなければできません。シールド工法は地上の環境を保全したまま地下を掘れる、大変便利で有効な工法だからです。そして、このシールド工法は日本が世界一の技術レベルを誇っている分野でもあるのです。

目標は地上空間の整備

トンネルの技術的な対象は地下ですが、目標は「地上をいかに快適に、豊かにするか」ということなのです。とりわけ、日本の都市は無計画に造られており、景観も安全性も考慮されていないことが少なくありません。そうした都市空間を快適で安全にするためには、地下空間の利用はとても有効なのです。
最初に述べたライフラインの地下化、洪水対策としての貯水施設のほかに、変電所や駐車場を地下に造る例も出てきています。地上になくてもよいものは地下にもってくることで、地上の環境保全を進める。未来に向かって、高度なトンネル技術はますます重要になっています。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 都市環境学部 都市基盤環境学科 教授 西村 和夫 先生

東京都立大学 都市環境学部 都市基盤環境学科 教授 西村 和夫 先生

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都市環境学、土木工学

メッセージ

高校生のときは、受験勉強だけでなく、さまざまな経験をしたほうが、大学に進学してから伸びると思います。部活や友だちとのグループ活動もよいのですが、できれば自分が生活している地域の活動に参加してほしいと思っています。例えば、地域のサッカークラブや野球クラブ、そのほかにも地域にはたくさんの活動があるでしょう。そういう場ではひとりよがりなふるまいをするのはダメですが、かといって自分から動かなければ何もできません。協調性とともに自分から率先して行動を起こす力を養うことが、高校時代には大切だと思うのです。

先生への質問

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。