これがないと始まらない! あらゆる分野に不可欠な「計測技術」

手術の自動化に向けて
計測はあらゆる分野に必要な技術です。計測がなければ制御もものづくりも成り立たないため、さまざまな分野でニーズに応じた計測の研究が行われています。
医療もその一つです。腹腔(ふくくう)鏡手術において医師が操作する手術支援ロボットは世界に広く普及していますが、外科医が減少傾向にあることを踏まえ、めざすところは自動化です。自動化には血管や臓器、病巣の位置を判断する計測技術が必要ですが、生体は細胞の多層構造でできているため、反射光で距離を測る3Dセンサでは上手く測れません。そこでストラクチャーライド方式と呼ばれる方法を用いて、腹腔内の三次元データ化に成功しました。この3Dセンサと光学画像で、ロボット鉗子(かんし)が自動的に病巣にアプローチするシステムの開発が進められています。
インフラの維持・建造にも
現在国内にあるインフラの多くは老朽化が進んでいます。例えば国が管理する橋だけでも70万本あり、点検のための人手不足は深刻です。そこで、橋などの構造物のひび割れを画像診断で自動的に検知・記録し、危険度を判断するロボットやドローンが開発されています。
インフラは大変大きな構造物で作られていますが、それを組み立てたり位置合わせする精度は、非常に高く、数十メートルの大きさに対して1ミリ以下の精度が求められます。ここでも計測技術が活躍しています。
ボルトをAIでチェック
鉄橋には何万本ものボルトが使われるため、建設の際はそのすべてが正しく締められているかを点検しなければなりません。現状では目視で行われていますが、人手も時間もかかります。そこで作業員のヘルメットにカメラを取り付けて、ボルトを締める段階で締まり具合をチェックするシステムが開発されました。AIで作業員一人一人の癖も学習して、正しく締まっていなければ精度100%でその場で教えてくれるため、作業の効率化が期待されます。
このように、最先端の計測の研究は、実験室ではなく現場で進められています。
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富山大学工学部 工学科 機械工学コース 教授笹木 亮 先生
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