観光で潤う日本、でも自然はオーバーツーリズムに泣いている?

観光で潤う日本、でも自然はオーバーツーリズムに泣いている?

オーバーツーリズムが起こっている

コロナ禍が終わり、世界で多くの人が観光を楽しむようになりました。観光先として日本が選ばれることも増えて、日本政府観光局の調査によれば、日本を訪れた外国人観光客の数は、2024年3月に過去最高の308万人を突破しました。こうした観光需要の上昇は経済に良い影響をもたらしている一方で、地域のキャパシティ以上に観光客が訪れて受け入れきれなくなってしまう「オーバーツーリズム」の問題を引き起こしています。

自然観光資源に与える影響

特に山や海など、回復の速度が遅い自然観光資源への影響は深刻です。例えば、キャパシティを超える観光客が山に訪れると、登山道が傷み、そこに生えていた木や草が死んでしまいます。一度死んでしまった草木はすぐには元に戻りません。自然観光資源をもとに発展した観光地では、こうしたオーバーツーリズムの問題に適切に対処しなければ、いずれ観光資源の価値が下がったり、観光資源そのものが使えなくなったりしてしまいます。そもそも、自然環境自体が尊重されるべきなのです。

自然観光資源を守るために

そこで現在、自然観光資源を守るために各地でさまざまな対策がなされています。その1つが、費用の徴収や値上げです。例えば山梨県は2024年夏から富士山の環境保全等の一環として一人当たり2,000円の通行料を徴収しています。
ただ、費用の徴収や値上げを行う際は、自然環境が日本の子どもたちの環境教育の場になっているということも忘れてはなりません。自然観光資源にアクセスするための費用を値上げすれば、特に低所得世帯の子どもたちを中心に、自然環境に触れて、その大切さを感じる機会が奪われてしまいます。また、費用を値上げして観光客が減れば、それだけ観光に携わる人たちの売り上げが減ってしまいます。過去に類を見ないほどの観光客が日本に訪れている今、複雑に絡み合う問題をどう解決すべきなのか、各地で難しい判断が迫られています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

和歌山大学 観光学部 観光学科 助教 佐々木 啓 先生

和歌山大学 観光学部 観光学科 助教 佐々木 啓 先生

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観光学、環境学

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メッセージ

あなたに伝えたいのは、「日頃から身の回りのことに関心を持ってほしい」ということです。私は今、自然観光資源について研究していますが、このテーマを選んだのは登山が趣味だからです。登山を楽しむ中で、日本の自然が観光資源として果たす役割とその保全に興味を持ち、研究を始めました。生活の中で感じた小さな疑問は、学問の扉を開く鍵となります。周囲のことに関心を持って、疑問を持ったことを調べて解決策を考えてみると、自分の学びたい分野が自ずと見つかると思います。

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和歌山大学は未来を託そうとする若者、保護者のみなさんの願いを受けとめ、若者とともに希望ある未来を創り出したいと決意しています。
新たな学びの場・新たな生活の場へ、期待とともに不安もあると思いますが、国立大学の強みは、学生数に対して教員数が多く、学生と先生の"つながり"が強固なことです。なかでも和歌山大学は、小規模クラス授業や対話的授業を重視するなどきめ細やかな教育と、行き届いた学生生活支援の体制を整えています。そして、卒業後の進路・就職を拓くキャリア・サポートには定評があります。