子育て中の保護者のつながりを創出する支援策

子育て中の保護者のつながりを創出する支援策

子育て中に抱える悩み

子育て中の保護者にとって、他者とのつながりは重要です。家の中で子どもとずっと過ごしていると、考えが行き詰まってしまうことがあります。そんなとき、身近に頼れる人がいれば、実際に子育てを手伝ってもらう、相談に乗ってもらうなどのサポートを受けられます。特に、少し前に子育てを経験した先輩とのつながりは、保護者にとって大きな支えになります。数カ月後や数年後の子どもの姿を見ることができて、子育てのノウハウなどを学べるからです。そこでK県では、まず子育てをしている母親を対象にした親支援プログラムを始めました。

K県の親支援プログラム

事例の一つが、「ノーバディーズ・パーフェクト・プログラム」という、体験学習サイクルの考えをベースとしたプログラムです。このプログラムでは、母親が主体的にディスカッションに参加して、ファシリテーター役の保健師などとともに課題への対処方法を考えます。それに向けてファシリテーターは事前に、母親が学びたい内容や困りごとを知るために、参加者一人一人と面談を行います。これにより、例えば子どもが靴を履きたがらなくて困っているときはどうするのかなど、母親の具体的な子育ての困りごとや要望に寄り添ってテーマ設定を行います。参加者たちはテーマへの共感を口にしたり、「前日に好きな靴を選ばせて玄関に置いておく」など、実践した解決策を発言したりします。そして次の週に実践した結果を共有して、自分たちなりの対処方法を見い出していきます。

参加者のその後を調査

プログラムの効果を調査すると、参加者の多くは悩みの共有や雑談などを通して仲良くなり、プログラム終了後も自主的に付き合いを続けていることがわかりました。そのため保護者同士の「つながり創出」にも一定の効果があるといえます。
全国の保護者を支援するために、各地域の課題を調査して適したプログラムを考案する研究や、ファシリテーターを担当できる保健師などの育成が行われています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

帝京大学 福岡医療技術学部 看護学科 准教授 田尻 登志子 先生

帝京大学 福岡医療技術学部 看護学科 准教授 田尻 登志子 先生

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地域看護学、生涯発達看護学

メッセージ

保健師の仕事を知ると、黒子のような目立たない内容だと感じるかもしれません。しかし保護者の孤立解消支援をはじめ、世の中が直面している課題に対して看護の知識や技術を駆使してアプローチできる魅力的な分野だと感じています。困っている人を応援できる力が身につくので、関心を持ってもらえると嬉しいです。また、日常のささいな疑問や感情を大切にしておくと、いつかそれを探究できるタイミングがやってくると思います。私や看護分野との出会いも、あなたの夢の実現のきっかけになれば幸いです。

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帝京大学 福岡キャンパスは有明海に面した雄大な自然と最新設備が揃ったキャンパスです。理学療法、作業療法、看護、診療放射線、医療技術(救急救命・臨床工学)の5学科を擁する福岡医療技術学部では、現代の高度な医療に欠かせない知識や技術に加え、患者さんや他職種のスタッフへの想像力やコミュニケーション能力といったチーム医療に必要とされる素養を高めながら、大牟田市という歴史ある土地で官民一体となり、各自治体と連携しながらさまざまな取り組みを実施していくことで医療のプロとして地域に貢献できる人材を育成します。