宇宙人に誘拐された人の話はウソ? ホント?

宇宙人に誘拐された人の話はウソ? ホント?

記憶の真偽を問う

アメリカには「宇宙人に誘拐された」と証言する人が多数存在します。それが本当かどうか見分けられるのでしょうか。
現在の心理学では「記憶は歪む・作られる」ことを前提にして研究が行われています。それが活用されているのが、裁判における証言の信用性鑑定です。証言者が語ることを心理学法則に基づいて分析するのですが、これらの法則は人間の一般的傾向を示すに過ぎないので、問題になっている証言者に該当するか保証できません。その人はその法則の例外かも知れないからです。そこで、特定個人の証言を吟味する方法が考案されました。

無実を訴える人のマーカーを探る

人は本当のことを話すときには特有のクセが出ることが多く、それが記憶をたどりながら語る際に現れます。このようなクセをマーカーとして、虚偽を見抜く手がかりにするのです。
法廷で犯行を認めていた人物があるときから無実を訴え始め、自白の信用性鑑定を受けることになりました。偶然法廷で語られていた実体験の語りを分析することで、彼のクセを発見することができました。そして、このクセが犯行の自白に現れていないことが確認されたのです。最近この事件の再審裁判が行われ、彼は無実と認定されました。

個人を問える心理学へ

宇宙人の誘拐体験談についても、「誘拐されたと言っている人一般」ではなく「さらわれたと言っているAさん」の話はウソかホントかが問題となるはずです。記憶研究だけでなく、心理学は人間一般に関する法則を提起し続けてきました。しかし一般的傾向を示さない人がいる以上、この法則によって特定個人を分析することには限界があります。この欠点が証言の信用性鑑定であらわになりました。検討すべきは「一般的な人間」ではなく、「目の前にいるこの証言者」だったからです。不思議なことに心理学では、「個人」を問うことがまれでした。現実生活では「この人」が問題になることが多く、個人を問うアプローチが必要です。この研究を通し、心理学の新たな展開に触れることができるでしょう。

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札幌学院大学 心理学部 臨床心理学科 教授 森 直久 先生

札幌学院大学 心理学部 臨床心理学科 教授 森 直久 先生

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臨床心理学

メッセージ

心理学は「人間」が研究対象であり、人ときちんと関わるために役立つ学問でもあります。大学の4年間では、知識だけを得るのではなく、現実の人間としっかり向き合い、人がどのように動き、どんなふうに話し、何をしているのか、または自分が知っていることを相手にもわかるように示すにはどう伝えればよいのかなど、人間観察をしながら考えてほしいと思います。社会に出るとその経験が必ず役に立つはずです。

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『学生と共に大学を創る』、この学園創立以来の考え方は現在も『学生・教員・職員のコラボレーション』という気風として脈々と受け継がれています。
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