1匹のザリガニから水族館に! 環境を通じて主体性を育む保育
お散歩で発見の毎日
保育園では日常的に散歩をしています。散歩中に出会ういろいろなものが子どもの五感を刺激して、感受性を豊かにします。大人にとっては毎日変わらない日常の風景でも、子どもにとっては保育園の外に出て歩きながら見て、感じて、触れるものすべてが新鮮で、新しい発見につながります。実は、この子どもの好奇心、興味関心こそ、保育の出発点なのです。
1匹のザリガニから始まった冒険
ある保育園で散歩中、一人の子が偶然ザリガニを見つけました。そのザリガニは弱っていたので逃がしましたが、それを見ていた農作業中のおじさんが「一緒に探してやろう」と別の1匹を見つけてくれました。それがきっかけとなり、みんなでザリガニを探しにいこう、という冒険が始まりました。
ザリガニを釣るための道具をつくって出かけて、思うように捕まえられなかったり、オタマジャクシやタニシなどの思わぬ生き物を捕まえたりと、夢中になって冒険を繰り広げます。そして、想定以上に生き物を捕まえたことで、保育園に水族館のような空間をつくることになりました。水槽の中に生き物を入れて周囲を写真で飾ったこの場所は、子どもたちの心を引きつけて、自ら進んでザリガニの世話をするようになりました。わからないことは先生と一緒に図鑑を見て調べるということも経験します。世話をする中で「ザリガニは冬眠する」と知り、最後は元の場所にザリガニを返しに行って、この冒険は終わりました。
子どもが主体となる保育
紹介したのは、子どもの興味関心を軸に子どもの主体性を尊重した半年間の保育の取り組みです(2023年6月以前)。保育園が大切にしているのは、環境を通して行う教育です。自然に触れるというよりも、子ども一人一人の興味を育んで伸ばしていく環境をつくることに意味があります。
保育とは、子どもの面倒を見るだけではありません。子どもをよく見て、学びたいことや意欲を引き出すことが重要です。そうすることで、人として生きていく姿勢がゆっくりと育てられていくのです。
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先生情報 / 大学情報
金城学院大学 人間科学部 現代子ども教育学科 教授 南 元子 先生
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