超小型衛星の開発技術が、わが国の宇宙産業を切り拓く
手のひらサイズの人工衛星
現在、通信や放送、地球観測などの目的で、数千機の人工衛星が地球を周回しており、その数は現在も増え続けています。そんな中で近年、「キューブサット」と呼ばれる、手のひらサイズの超小型衛星が注目されています。小さく軽くすることで、設計・製造や打ち上げコストが抑えられ、一回の打ち上げで複数機を宇宙まで運ぶことが可能になります。現在、人工衛星を構成する電子機器やコンピュータの小型・高機能化とともに、宇宙空間での生物実験や地球観測技術の実証実験など、新しい宇宙利用を促進するためのさまざまな技術開発が進められています。
求められる電気・電子・電波のイノベーション
多くの可能性を持つキューブサットですが、小型化することで信頼性が低下しては意味がありません。ただ、アンテナなどのように、これ以上は小さくできないという物理的制約のある機器も少なくはないので、すでにあるモノを小さくするだけではなく、構造や仕組みを抜本的に見直すアイデアと技術が必要です。ショルダーバッグほどの大きさだった携帯電話がスマートフォンに進化したようなイノベーションが、人工衛星を構成する要素技術の各分野においても求められています。
日本は存在感を示せるか
例えば、スマートフォンの地図上にあなたの移動ルートが正確に表示されるのは、人工衛星から発信された電波のおかげです。ナビゲーションシステムが登場したばかりの頃、測位用の電波を発信していたのはアメリカのGPS衛星群だけでしたが、その後、日本も含め多数の国が測位用衛星を打ち上げたことで、ナビゲーションの精度は年々高まっています。2000年以降、特に欧米諸国では民間による宇宙産業が大きく拡大している一方で、日本における宇宙産業の存在感はまだまだ小さいのが現状です。近い将来、超小型衛星やキューブサットが宇宙産業の主役になると予測されています。国内・外の多くの大学や研究機関、ベンチャー企業などが、より高性能な超小型衛星やキューブサットを開発する研究に力を入れています。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 理工学部 航空宇宙工学科 講師 鶴田 佳宏 先生
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