方向音痴は、日本ならではの文化?

方向音痴は、日本ならではの文化?

方向音痴は治るのか?

「方向音痴」は、目的地への道順を組み立てたり、目印を憶えたりするのが苦手な人を指します。このうち、目印の憶え方は、着目点を改善することで、よくなる可能性があります。具体的には、ナビゲーション能力の高い人に付き添ってもらい、「この角には薬屋が」「次の角には看板が」などと、着目点を言ってもらいながら一緒に歩くと、ある程度はパフォーマンスを向上させることができます。このことは、実験でもある程度確かめられています。

不便がなければ改善する必要はない

個人のパフォーマンス向上の大きな鍵を握っているのが、個々のモチベーションです。禁煙やダイエットの方法論はたくさんありますが、「何としても続ける!」という強い意志がなければすぐにタバコを吸ってしまい、ダイエットであればリバウンドしてしまいます。方向音痴も「何としても治す!」という意志がなければ、仮に一時期はパフォーマンスが向上しても、すぐに元に戻ってしまうのです。しかし日本は、このモチベーションを保つのが難しい社会だと言えます。比較的治安がよく、危険な場所があまりないため、環境的に道に迷うことへの危機感が薄いからだと考えられます。また、決定的な不便があれば直す意思も生まれるでしょう。逆にいえば、不便がなければ、方向音痴でもよいのではないでしょうか。

日本は方向音痴が許される優しい社会

もうひとつ、文化許容量の大きさもモチベーションを保てない一因です。例えば、アメリカでは何度も同じ場所で迷う人は、能力が低いとみなされる可能性があります。しかし日本の場合、「方向音痴だから仕方がない」と思われる程度です。方向音痴を治すためのモチベーションにつながる環境が昔から少ないのです。言い換えれば、日本は方向音痴に対して寛容な、優しい社会だと言えます。実際に日本で自分を方向音痴だと思っている人の割合は、諸外国に比べてかなり高いというデータがあります。自分を方向音痴だと口にできるのは、日本人特有の考え方なのかもしれません。

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静岡大学 教育学部 教育心理学専修 教授 村越 真 先生

静岡大学 教育学部 教育心理学専修 教授 村越 真 先生

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心理学、文化人類学、社会学

メッセージ

「ドラゴン桜」というマンガにはモチベーションをいかに保つか、習ったことの憶え方などヒントになることがたくさん描いてあります。心理学的に見ても実に理にかなっていますから、ぜひ読んでください。もうひとつ、受験勉強の際には単に学力を高めるのではなく、学力を高めるための方法論まで身につけてください。頭のよい人には、知識を溜め込む人と、知識の身につけ方を知っている人の2種類ありますが、後になって伸びるのは後者です。受験という機会を生かし、学力を身につけるための方法論を確立してほしいと思います。

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