ワクワクするような、理科の授業をしよう!
サナギにならない幼虫の秘密とは?
小学校3年生の理科の授業では、モンシロチョウの飼育と観察をします。チョウは「卵→幼虫→サナギ→成虫」と変化しますが、中には幼虫からサナギにならないものもいるのです。それは見た目にはわかりませんが、実は寄生蜂によって卵を産みつけられた幼虫です。寄生されたチョウの幼虫は、体内でふ化した寄生蜂の幼虫によって体の内側を食べられ、寄生蜂が脱出した後に死んでしまいます。
蜂の毒とウイルスが生体防御を突破!
同じような関係を、アワヨトウという蛾(が)とカリヤサムライハチという寄生蜂でも説明することができます。寄生蜂がアワヨトウの幼虫に卵を産みつけると、およそ10日で成長・発育して幼虫の体から脱出します。アワヨトウの幼虫はその間生きていますが、寄生蜂がアワヨトウの幼虫を生かしておくのは、自分たちの大切な栄養分を増やさなければならないからです。
生物には、本来、体に異物が侵入すると血球が集まってきて排除する「生体防御」という機能がありますが、なぜ寄生蜂の卵は体内で排除されないのでしょうか? それは寄生蜂が産卵する時に、毒液とウイルスをアワヨトウの体内に注入し、生体防御が働かないようにしているからです。最初は、数時間だけ効果のある毒で血球が集まらないようにし、その後ウイルスが感染して長い期間血球が集まらないようにしていると考えられます。アワヨトウはイネ科植物を食べる害虫なので、寄生蜂のような天敵を利用して防除する「天敵(生物)防除」という方法が研究されています。
実感をともなった理科教育の実現へ
アワヨトウや寄生蜂などは比較的管理しやすいので、飼育しておけば、いつでも観察や実験に活用でき、昆虫について、より深く、さまざまなことを知ることができます。
初等教育について、文科省は「実感をともなって子どもたちに理解させることが大切だ」としています。理科教育では、教員が生物をより理解し、自らの手と頭で新しい教材や実験方法をつくり上げていくことが大切なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
皇學館大学 教育学部 教育学科 教授 中松 豊 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
昆虫生理学、理科教育、生物学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?