「島の暮らし」が建物をかたち作る

伊是名島の民家の特徴
沖縄県には、独特な風土に根差した民家が多く見られます。特に離島である伊是名(いぜな)島では、伝統的な建築様式が今も受け継がれており、さらに島の中でも地域ごとに異なる特徴が見られます。例えば、島にある4つの集落のうち中心部に位置する仲田地区では、市街ならではの限られた敷地面積を有効活用するための工夫が凝らされています。一方、山側にある諸見地区では、広い敷地を持つ家が多く、石垣で囲まれた伝統的な平屋が多く残されています。また、大きな漁港に近い伊是名集落では、住民の多くが漁業を営んでおり、海との関わりが民家の形にも影響を与えています。
地域ごとの建築の変化
民家の建築様式は、単にその地域の風土を反映するだけでなく、住民の生活の変化にも影響を受けます。例えば近年、全国的な問題となっている空き家の増加は、伊是名島でも同様に見られます。しかし最近では、空き家が放置されるのではなく、家族や地域の人々が定期的に訪れて手入れをする光景が増えてきました。こうした取り組みは建物や地域への愛着の表れであり、地域独特の文化や価値観を守ろうとする意識の高まりを示しています。それに伴い、島の人口にも変化の兆しがあり、今後は転入者の増加や民泊利用など、住宅の新たな活用方法が生まれる可能性も予測されます。
生活と建築の密接な関係
民家は単なる建物ではなく、そこに住む人々の暮らしが色濃く反映されたものです。民家の状態は、継続的に地域を訪れて住民に聞き取り調査を行うことで、情報が蓄積されていきます。建物の向きや間取り、築年数に加えて家族構成や職業といった住民の生活に関わる情報も収集し、その蓄積された情報を分析することで、地域の特性や人々の暮らしと建築との関係性をひも解くことができるのです。地域ごとの特徴的な民家を調査し続けることは、過去と現在をつなぐ大切な記録を残すことにつながり、そこで得られた知見がほかの地域や建物の保存・活用へとつながっていくでしょう。
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共立女子大学建築・デザイン学部 建築コース 准教授稲葉 唯史 先生
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