身近な危険、「群集事故」のメカニズムを工学的に解明する!
限られた空間に人が密集する危険
群集事故とは、人がたくさん集まっている時に発生する事故です。2001年7月、兵庫県明石市・大蔵海岸で開催された花火大会で、至近の駅から海岸へ向かおうとする人と帰ろうとする人の流れが歩道橋上で衝突し、多くの死傷者が出ました。このイベントでは15~20万人という人出が予想されていたにもかかわらず会場への通路が一本の歩道橋しかなかったために、1㎡あたり13~15人が立ち往生する異常な混雑となり、何かのきっかけで全体が崩れる「群集なだれ」が発生して大事故となりました。
恐ろしい「群集なだれ」はどうやって起こるのか
群集事故には大きく分けて2種類あり、1㎡あたり5人の密度で発生すると言われているのがよく知られる「将棋倒し」です。群集なだれは将棋倒しよりもっと混雑した状態で発生しますが、どのようなきっかけでどんな場所で発生するのかはよくわかっていません。しかし群集事故のメカニズムを知るために、事故と同じ状況を再現して実験するわけにはいきません。そこで、もともと土木分野で土砂災害のシミュレーションに使われる解析ソフトを応用して、群集事故の解析をする研究が進んでいます。
土木の手法で歩行者の動きをシミュレーション
土石流などが起こるとき、ある岩が別の岩にぶつかって力を受けるとどんな動き方をするかを歩行者にあてはめてシミュレーションする手法が、明石市の事故解析にも役立ちました。歩道橋上で事故が起きたのはコーナー部でしたが、実際に計算すると、人と人がぶつかった時に押し合う力がコーナー部で最も大きくなることが再現できたのです。群集事故は初詣などで起きやすく、世界的に見てもサウジアラビアのメッカなど、聖地に何十万人と信者が集まる宗教行事でよく起こっています。群集事故のメカニズムを解明できれば、大規模なイベントや巨大ターミナルの計画をより安全に進めることができるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
関西大学 社会安全学部 安全マネジメント学科 教授 川口 寿裕 先生
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