「こころ」の病気について、正しく理解するために
こころの健康がおびやかされている現代社会
体重や体脂肪、ウエストなど体の健康に気を配っている人は多いものの、こころの健康についてはあまり深く考えないものです。しかし先行き不透明な経済状況、核家族化による育児や介護の負担、思春期の悩み、学校におけるいじめや不登校の問題など、現代社会では誰もが不安やストレスを抱えています。そして、ストレスによりこころの健康がおびやかされています。最近よく耳にする「うつ病」や「統合失調症」といった精神疾患の背景にも、ストレスがあると言われています。
地域社会から隔離され差別をうけてきた患者たち
精神疾患患者への支援は、地域の人と切り離した精神科病院の中で行われてきました。地域社会と隔絶されているので、地域の人々は患者との直接的な関わりがなくなり、想像がふくらんでいく傾向にありました。しかも、その想像は過去に家族から聞いた情報、新聞報道による断片的な情報などの間接的な情報で形成され、「自分とはどこか違う」というイメージが定着していきます。いわゆる先入観による偏見ですが、この偏見が代々受け継がれると、具体的行動をともなう差別へとつながっていきます。実際、アパートの賃貸契約を断られる、就職試験で落とされる、あるいは地域に精神障がい者の施設をつくろうとしても、反対運動が起こることもあります。
お互いを知り、理解し合うことが大切
精神疾患患者や精神障がい者にとって、当たり前の生活ができる地域社会になるためには、グループホームや働くことを支援する施設、そして何より国民によるこころの健康と病気への理解が必要です。特に若年層への理解を促す啓発活動が求められています。
現在大阪をはじめ全国各地では、精神疾患から回復した人を語り部として学校に招き、話を聞いたり、高校生や中学生との交流の場を設けたりする活動が行われています。こころの病を知り、偏見や差別をなくすには、当事者と直接ふれあうことが一番の近道なのです。精神保健福祉士はこのような差別や偏見のない地域づくりを担っています。
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先生情報 / 大学情報
皇學館大学 現代日本社会学部 現代日本社会学科 准教授 榎本 悠孝 先生
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